プレミアリーグの時間BACK NUMBER
今季の“がっかり”ナンバーワン!?
転落のリバプール、監督人事の行方。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTomoki Momozono
posted2015/05/30 10:40
サポーターが熱い期待を寄せたロジャーズ。果たして来季もこの光景は見られるのだろうか。
スアレスの大きすぎる穴と、後継たりえなかったFWたち。
穴を埋められなかったという批判はあるが、そもそもスアレスのように年齢的にもピークにあるワールドクラスの穴埋めは困難を極める。新センターFWの1人で、リーグ戦2ゴールに終わったリッキー・ランバートは、スアレス離脱の前にタイプの異なる最前線のオプションとして獲得された駒にすぎなかった。もう1名、たった1得点のマリオ・バロテッリは最終節を待たずに戦力外扱いされているが、「問題児」の操縦でさじを投げた指揮官には、かのモウリーニョも含まれる。
また、バロテッリ獲得という「賭け」に失敗した事実ばかりが取沙汰されているが、ロジャーズが新得点源として欲していたFWは、結果的にアーセナルの新戦力としてプレミア1年目に16ゴール8アシストを記録することになるアレクシス・サンチェスだった。
フロントはアーセナルを上回る移籍金提示を要求してまで獲得に動いた。しかしサンチェスは在ロンドンのクラブを望み、商談相手だったバルセロナは移籍市場で10年以上の「取引実積」を持つアーセナルを好んだことから、当初の前線補強プランは断念せざるを得なかった。
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であれば、得点力低下を織り込んで守備への意識を高めるべきだったという考え方もあるだろう。事実チェルシーでは、新1トップのジエゴ・コスタが戦線離脱を余儀なくされたが、モウリーニョが堅守モードへとスイッチを切り替えたことで優勝争いでの逃げ切りが可能になった。
但し、守備力に訴えたモウリーニョ采配が万人に評価されているわけではないように、逆に攻撃の信念を貫いたロジャーズの勇気を評価することもできる。
機能していた3バックを4バックに変えたのは何故……。
今季のロジャーズ采配に解せない部分があったとすれば、シーズン半ばから奏功していた3バックを、大事な終盤戦で4バックに戻したシステム変更だろう。きっかけはリーグ戦での連続無敗を14試合目で止められた30節マンチェスター・ユナイテッド戦(1-2)と、続くアーセナル戦(1-4)での連敗。その2週間後のFAカップ準決勝では、途中で陣形を変えたものの、アストンビラに逆転負けを喫した。
フォーメーション変更の失敗を象徴する選手がエムレ・カンだ。MFとDFを兼任する新戦力は3バックの右CBとしては及第点のプレーを見せていたが、4バックの右SBとしては露骨にぎこちなかった。前述のアストンビラ戦でも4バックへの切り替え後に苦戦したカンは、問題のストーク戦でも右SBとしてチーム内最低の出来に終わり、前半だけでピッチを去った。