野球善哉BACK NUMBER
生意気? 柔和? それとも野性味?
DeNA・山崎康晃の反骨心と最終形。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/05/19 10:40
マウンドへ向かう時も、投げている時も、山崎康晃は表情豊かだ。スターになる気配を身にまとった選手である。
「生意気」と「芯の強さ」、紙一重の魅力。
大学時代、彼の芯の強さを物語るエピソードがある。
ある日のリーグ戦の試合後のことだった。あまりの不調で納得がいかなかったのだろう、「今日(の取材時間)は短めでお願いします」といって取材エリアに現れた山崎は、「そろそろいいっすか」といって取材を早々に切り上げたのだ。
アマチュアの取材現場で、監督やチームなどが選手を気遣って取材時間を規制することは珍しいことではない。しかし、自ら取材を切り上げてしまう選手はあまりみたことがなかった。
人によっては「生意気なヤツ」というかもしれない。しかし今の山崎のパフォーマンスを見ていると、彼の強さはその性格面から来ていると納得させられる。
山崎の活躍に至る道筋で見逃せないのが、キャンプの頃までは先発としての期待が高かった山崎を、上手くリリーフに配置転換した中畑監督の采配だ。
就任以来、これまでも中畑監督は投手の配置転換や野手のコンバートを成功させてきている。
主軸を打つ梶谷隆幸、筒香嘉智、若手のホープ・桑原将志は野手のコンバート組。投手の配置転換では、先発ローテーションを務めている山口俊は、昨季クローザーから転身した投手だ。今季は出遅れている三上朋也だが、ルーキーだった昨季はシーズンの途中から主にクローザーとして活躍。65試合に登板して13H21Sを挙げている。さらに救援陣では、国吉佑樹も配置転換を果たした一人だ。
DeNAの配置転換は中畑監督1人の判断ではない。
実はこの配置転換、指揮官一人の判断事項ではない。
チームの中で綿密な打ち合わせがあるのだと、高田繁GMはいう。
「梶谷や筒香はチームとしての策。そりゃ梶谷がショートを守るのがいいし、筒香はサードがいい。でも、問題を感じているからコンバートをしているわけです。桑原にしても、スローイングに難があって、彼の場合、一軍への最短距離を考えたときに、内野手にするより外野手にした方がいいと転向させました。ただ投手に関しては、監督の意図が大きく反映されているのは事実です。
例えば、三上はどう考えても先発向きだというのが僕の意見。少なくとも、クローザーよりその前の方がいい。でも、監督はどうしてもクローザーで使いたい、と。昨年は山口がクローザーで使えないという状況でしたからそうなったんです。コンバートや配置転換は、監督だけで決めることもないし、監督の要望に対して頭ごなしにダメだということもない。お互いの話し合いの中で決めている」
山崎に関しても、筆者が「山崎の適性は後ろの方では?」とGMに尋ねたことがあったが、「ドラフト1位の選手ですし、長くローテーションとして活躍してもらいたいと思って獲っている」と話していた。