野球善哉BACK NUMBER
生意気? 柔和? それとも野性味?
DeNA・山崎康晃の反骨心と最終形。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/05/19 10:40
マウンドへ向かう時も、投げている時も、山崎康晃は表情豊かだ。スターになる気配を身にまとった選手である。
42試合終了時点で22試合登板に懸念の声も?
監督・GMの意見交換の風通しが良いからこそ、山崎の個性も生かされているのだろう。
とはいえ懸案事項もある。42試合で22試合に登板しているという登板過多だ。
筆者が改めていうまでもなく、すでに多くのメディアや解説者たちが山崎の疲労を危惧している。山崎本人は「全然、疲れてません」と笑顔で返すが、チーム全体は山崎の登板ペースを意識し始めているという。
事実、15日からの広島との3連戦では山崎の登板はなかった。15日の試合では1点リードで9回を迎えたものの、山崎は登板していない。この場面で山崎が投げないというのは、よほど配慮があったのだと考えられる。
しかし、DeNAが意識して取り組まなければいけないのは、こうした登板間隔の調整ではないと筆者は考える。もっと長期的な視点で、しっかりとしたビジョンを持つことが大事なのではないか。
登板間隔はもちろん、育成ビジョンこそが必要だ。
ここ数年、DeNAが苦戦を強いられてきた背景には、救援陣のコマ不足という問題があった。
だからこそ山口俊と三上の配置転換が行なわれたわけだが、昨季大車輪の活躍を見せた三上が今季は怪我で出遅れているという事実をどうみているのか。戦力として必要な選手をどのように起用していくかは考えなければいけない。
さらにもう1年遡ると、'13年にチーム最多登板を果たした大原慎司も、昨季中に左肩痛を発症し、今季の一軍登録はまだない。中畑政権下ではないとはいえ、ルーキーイヤーの2011年に、ルーキー最多登板を記録した投手でもある。
山崎は、素晴らしい球を投げる。相手をねじ伏せることができる強い芯も持っている。だから、クローザーとして重用したくなる理由は分かる。
しかし、これまでと同じ轍を踏まないためにも、登板過多云々の議論だけではなく、このルーキーを、この先どう育成していくか、というビジョンがあってしかるべきだ。
その先にこそ、DeNAの本当の意味での明るい未来が待っている。