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“敗因”を抱えながらレースに勝つ。
横山典弘が変える、「競馬の常識」。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2015/05/11 11:25
昨年の10月に同じコースで2歳レコード勝ちした時と同じタイムでNHKマイルカップを制したクラリティスカイ。父のクロフネは同レース制覇後ダービーに向かったが……。
アルビアーノが抜群の手ごたえで、最後の直線に。
アルビアーノは持ったままの抜群の手応えで、内のレンイングランドに並びかけて直線に入った。
そして、ラスト400m地点で先頭に立ち、後ろを突き放しにかかった。
しかし、すぐ外からクラリティスカイがじわじわと差を詰めてきて、ラスト200m地点で並びかけられ、ラスト100m地点でかわされた。
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アルビアーノは1馬身差の2着。一度はクラリティスカイを差し返そうとし、猛然と追い込んできたミュゼスルタンの追撃を首差しのいで、負けん気の強さを見せた。
「直線に向いたときはやれると思った。よく頑張ってくれた。GIでも落ちついていたし、精神力が強い」と、あと少しのところで自身初のGIタイトルを獲り逃した柴山は、パートナーを讃えた。
管理する木村哲也調教師は、「結果に対しては、自分が足りなかったということです。騎手も馬も素晴らしかった。馬にも人にも感謝しています」と悔しさを押し殺すように語った。
負けはしたものの、このときまで世代唯一の「無敗の重賞勝ち馬」だったという看板に恥じない走りを見せてくれた。
昨秋勝ったいちょうステークスと全く同じタイムで制覇。
クラリティスカイは、昨秋、同じ東京芝1600mで行なわれたいちょうステークス以来の勝利で、今回の勝ちタイムはそのときと同じ1分33秒5だった。上がり3ハロン(600m)は33秒9。
「レース前は、いちょうステークスと同じような流れになるだろうと思っていた」と横山が言ったとおり、いちょうステークスも今回同様、絶好位の3、4番手から抜け出し、上がりを34秒0でまとめていた。
「今回は状態次第だと思っていた。返し馬がよかったので、真っ向勝負できるかな、と」
同じようなレースをすれば勝てるほどGIは甘くないはずなのだが、それをやってのけてしまうのが横山典弘という騎手だ。このレースでは、彼が話していたように道中かなり折り合いを欠いていた。
前週の天皇賞・春では、3200mという長丁場でありながら、騎乗馬ゴールドシップと通じ合った瞬間が一度もなかったという。それなのに結果を出した。昨年、ワンアンドオンリーで臨んだダービーも、ポジションをとりに行ったぶん掛かってしまったのに勝ってしまうなど、普通は「敗因」になりそうなマイナスをレースで抱えながらも、きっちり馬を走らせる。彼が乗る馬に関しては、「GIというのはすべてが上手くいかないと勝てない」という「競馬の常識」を忘れて評価すべきかもしれない。