Number Do ExBACK NUMBER

<RUNの百貨店> 時代を創ったシューズの話 

text by

礒村真介

礒村真介Isomura Shinsuke

PROFILE

photograph byHirofumi Kamaya

posted2015/05/12 10:00

<RUNの百貨店> 時代を創ったシューズの話<Number Web> photograph by Hirofumi Kamaya

超軽量ながらトレラン機能を兼備した「バハダ」。

<montrail Bajada 「軽さと強さの両立」>

 数年前まで、片足の重さが300gを切るようなトレイルランニングシューズは一部の「超軽量」モデルに限られていた。各メーカーのボリュームゾーンはアラウンド350g。不整地を走るために必要なプロテクションや、靴全体のねじれ剛性などを一定のレベルでクリアしようとすると、大体これくらいの重さになったのだ。

 それだけに、モントレイルが2012年に発表した〈バハダ〉は衝撃的だった。万人向けのフラッグシップモデルながら、カタログ値で292g(27cmの場合)と300gを切ってきたのだ。もちろん不整地でのグリップ力や、凹凸の突き上げからの保護といった、トレラン用としての機能を省略するなんてヤボなことはせずに、だ。

ADVERTISEMENT

 モントレイルの契約プロトレイルランナーで、日本の第一人者である石川弘樹さんはこう語る。

「ミッドソールはしなやかで軽量ですが、適度な硬さと十分な幅があるため、走りがブレません。とくにかかとの安定感はピカイチで、これが長距離でも足を疲れさせません。軽さと安定を兼ね備えた、とてもバランスのとれたモデルなんです」

トレランシューズはまだまだ発展途上のジャンル。

 一般トレイルランナーからの評判もすこぶる良く、同名モデルでの継続が珍しいこの業界において、毎年必ず展開されるベストセラーとなっている。それはそうだ。軽ければ単純にそのぶん速く走れるし、思う通りに足を運べる。つまり気持ちいい。そもそもトレイルランナーは多かれ少なかれ、爽快感を求めてトレイルに入る。快適であることは、何より大事なことなのだ。

 トレイルランニングシューズの歴史は1988年、同社の前身ワンスポーツ社の創業にはじまるといわれる。まだ若く発展途上のジャンルなのだ。おまけに世界規模でトレラン人気の高まりがすさまじく、業界の技術革新のスピードは速い。結果、昨今では200g台のモデルも珍しくない。その先鞭をつけ、象徴的存在となったのが〈バハダ〉だった。

 今季はアップデートがなされ、〈バハダ2〉へと進化した。重量は少々重くなり、カタログ値で326g。違いはミッドソールに用いたフリューイッドフォームという特殊なEVA素材で、反応性と弾力性が大きくアップしているという。これにより衝撃吸収性を増しながらも、重さを感じさせない走りにつながる。つまり悪路をより快適に走るための、いたってポジティブな重量増なのだ。はたして業界の動きがどう出るか、注目である。

雑誌『Number Do RUNの百貨店』では、「NB 1040」と「montrail Bajada」の
第1作から最新プロダクトの写真を掲載。またナイキの超人気シリーズ
「NIKE FREE」については、アメリカ本社で開発にあたった担当者に直撃。
“究極の素足感覚”を生み出すメカニズムについて聞いています!
つづきは、雑誌Number Do、もしくはNumberモバイルでお読みください。

関連記事

BACK 1 2

陸上の前後の記事

ページトップ