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大谷翔平、打撃不振の意外な理由。
「投手目線」で打席に入っている!?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNanae Suzuki
posted2015/04/27 11:30
投手としては開幕5連勝で防御率0.80、38奪三振という抜群の成績を残している。
不振の中でも「変えられるところは大胆に変えよう」。
現状打破のため適度な守備機会も与えたほうがいいのではないかと言えなくもないが、二刀流の調整の難しさは依然として残るだろう。チームもそれを熟慮した上での起用なのだから、今の配置が決定的に間違っているというわけでもない。
何より大谷自身、野手として試合勘が鈍らないよう、与えられた立場のなかで工夫を凝らしながら活路を見出そうとしている。試合前練習でのティー打撃で、右足を上げる際にその高さを変えたりと、ベストな体重移動やタイミングを模索していることなどは顕著な例と言えるだろう。
その狙いを大谷が簡潔に答える。
「変えられるところは大胆に変えようという意識は、常に持ってやっています」
それでも彼は「打てない理由はいろいろあるんですけど」と、現在の打撃不振について冷静に分析もしているのだ。
「投手目線」で打席に入ってしまうこともあった。
大きな原因として大谷が口にしたのが、打席における自分の間合いだ。
「ピッチャーを見るのではなく、自分のスイングをすることだけを考えないと」
第1号本塁打を放った4月1日のロッテ戦ではそれができていた。この一打を大谷は、「自分の間でいいスイングができました」と珍しく自画自賛したほどである。
結果を出した試合で言えば、決勝の二塁打をマークした15日のロッテ戦。ここでは、「変化球を狙っていました」と振り返っていた。
後者のケースは、「読みが冴えた」と評価できる内容だった。だが、裏を返せば「投手目線」で打席に入っていたことになる。大谷の言葉を借りれば、相手を読むことに比重を置いた打席が多かったばかりに、本来の自分のスイングができなくなっていた――ということになるだろうか。
そんな反省を経て復調の兆しを掴んだのが、22日の西武戦だった。
0対0の4回、ルブランの外角低めのストレートをすくい上げ、低い弾道の打球はそのままライトスタンドに突き刺さった。
「ちょっと強引にいきました。ボールがちょっと低かったので入らないかな? と思いましたけど、バットの芯に当たったので入ってくれてラッキーでした」
試合後、安堵の表情を浮かべていた大谷だったが、「理想とする打球とはちょっと違いますね」と満足している様子はまったくなかった。