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5年ぶりのロングインタビューで、
イチローが示した「言葉の力」とは?
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byTakuya Sugiyama
posted2015/04/16 11:00
新天地マイアミ・マーリンズでメジャー15年目、日米あわせてプロ24年目のシーズンを迎えたイチロー。
「虚しさなんて、しょっちゅう感じています」
記事のタイトルとなった「変化、破壊、成熟」は、その全体を貫くキーワード、といっていいだろう。
「確かに、僕は変わることがまったく、怖くない。このフォームでシーズン262本のヒットを打っても、次の年にはまるっきり形を変えたこともあるし、むしろそこに停滞していることのほうが怖い」
「なぜですかね……破壊したくなってきたのかなぁ。破壊欲みたいな、そんな言葉があるのかどうかわからないけど、そんなことが確実に芽生えてきたような気がします」
「虚しさなんて、しょっちゅう感じています。でもそれこそが、成熟へ向けての道ではないですか」
いずれのフレーズも、ここだけを抜き出して語ってしまうべきではない。前後の文脈の中で是非味わってもらわなければ意味はない。
だがそれでも、この希有なアスリートの言葉の力の一端を感じ取っていただけるはずだ。
取材する側に自省の念を抱かせた、イチローのある言葉。
他にも、取材する側としては、喉元に鋭利なものを突きつけられたような思いにさせられる言葉があった。
「とても大切な存在ではありますが、基本的にはメディアのことは敵だと思ったほうがいい」
「とくに今の時代、黙ることこそが主張だ、という図式が生まれているのは皮肉な話だと思います」
取材を終え、フロリダからトランジット先のシカゴへと向かう機内で、改めてこの言葉を思い返した。われわれメディアは、アスリートとの関わりをどうしていくべきなのか。沈黙ではない、彼らの言葉や行動に耳を目を傾け、発信していくものとして、いったい何ができるのか──。これまで幾多のアスリートから投げかけられたメッセージの中で、これほどまでに自省の念を抱かせたものは、いまだかつてなかった。