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引退する厩舎、騎手の最終日は狙い?
2人の調教師の花道は飾られたのか。
posted2015/03/04 10:30
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph by
Kyodo News
中央競馬は2月が年度末になっている。引退する騎手や調教師は2月の最終開催日が最後の舞台で、3月最初の開催日には新人がデビューする。
今年は2月28日の土曜日が年度末の最終開催日、3月1日が新しいスタートの日で別れと出会いがつづけてやってきてなかなかおもしろかった。
以前は引退する騎手や調教師の最後のレースになると、「ねらいだ」などとまことしやかにささやくファンが多かった。競馬ファンは陰謀論というか、「レースはだれかがコントロールしている」という疑いが大好きで、引退ともなれば、花道を飾らせるために周りは遠慮するから、こういうときは引退厩舎、引退騎手の馬を買えというのがセオリーめいて語られたりした。
自分が見た限りでも、かつての吉永正人、郷原洋行といった名騎手の最終レースでは、実力以上に騎乗する馬の馬券が売れ、相撲の千秋楽みたいな互助会神話に影響されている人は少なくないんだと感じた覚えがある。
もちろん、そんな「調整」などあるはずもなく、勝って華麗に花道を去っていく騎手、調教師にはめったにお目にかかることができない。吉永も郷原も人気になったが勝つことはできなかったと思う。
メインと最終を連勝した松永幹夫の最終日。
もう、「引退する厩舎、調教師を狙え」なんて昔話だと思っていたら、2006年、びっくりすることが起きた。この年、引退する騎手の松永幹夫(現調教師)が2月末のレースに出てきて、メインレースと最終レースを連勝したのだ。
メインレースで勝ったブルーショットガンは名手松永の最後の重賞にもかかわらず15頭立ての11番人気と人気がなかった。その馬でみごとな追い込みを見せ、単勝は3800円もつけた。
「幹夫の最後の重賞なんだから、思い出馬券の1枚も勝っておけばよかった」とほぞをかんだが、つづく最終レースは「そんなにできすぎた話はないだろう」と松永の馬を買わなかった。すると、松永のフィールドルージュが2着に3馬身半の大差をつけて圧勝し、往復ビンタを食らってしまった。「イケメン騎手には女神も甘い」とつくづく思ったものだ。