野球クロスロードBACK NUMBER
石川、大瀬良、森、松井……。
'13年ドラフト1位選手の○と×。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/12/31 11:00
広島の先発ローテーションを守り、CS進出に大きく貢献した大瀬良大地。187cmの恵まれた体格をフルに生かしたスリークオーターの迫力は圧巻。
森が実現した「セールスポイントをアピール」。
初アーチから3試合連発。高卒ルーキーとしては46年ぶりの快挙を打ち立てた西武の森友哉は、「初球からしっかりと自分のスイングをする」といったアマチュア時代からの持ち味を貫いたことで結果を残した。
なぜ、自分がドラフト1位で指名されたのか? 背景を客観的に分析することができれば、自ずと「自分のセールスポイントでアピールする」といった答えにたどり着く。その視点から言えば、森の判断は正しかった。
だが、今年のドラフト1位に限って言えばプロのレベルにいち早く順応できるかどうか。これが結果を残せたか否かの分岐点だった。
試合を重ねるごとによくなった大瀬良と石川。
シーズンを通して、それを見事に体現できたのが大瀬良だ。
ドラフト前から150kmを越えるストレートばかりが注目されていたが、試合を重ねるごとに自身の投球をマネジメントできるようになった。
シーズン序盤、彼は自らの課題をこう述べていたものだ。
「1球、1球大事にしていくことはもちろんですけど、それだけじゃなくて『このバッターは外角低めで打ち取ろう』とか、相手を見ながら、調子が悪いなかでも試合中に修正できるようにしていきたい」
ストレートに頼らず、時にスライダーを多投する。ゲーム中盤から終盤のピンチではギアを上げるなど、ペース配分もプランニングしていく。前評判通りの結果を残せたのは、大瀬良の「考える投球」が実ったからだった。
同じく新人王の石川は、社会人時代から定評があったシンカーを武器に勝ち星を重ねたが、それだけで10勝できたわけではない。
「プロでやっていく自信がなかった」と当初は弱気だった。それでも、プロのマウンドではシンカーだけに頼らずストレートにも磨きをかけ、ふたつの球種を巧みに操る投球術を身につけた。5月から夏場にかけて苦しんだが、投げるたびにスタイルを確立していき、最終戦ではプロ初完封。石川の選択が間違いではなかったことを証明してみせた。