フットボール“新語録”BACK NUMBER
ドイツ代表が10年続けた“肉体改革”。
「体幹」を超えた「ムーブメント」とは?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2014/10/29 10:30
ウォームアップでは各部位の動作を1つひとつ確認するとともに、複数の動きを連動させるエクササイズを行なっている。このようなハイブリッドな動きを毎日繰り返すことで自然な機能性を高める。
「人間が本来持つ機能」から考える。
40歳の敏腕トレーナーは、穏やかな口調でレクチャーを始めた。
「アスリーツパフォーマンスのトレーニングの考え方としては、『人間の本来持っている機能はこうあるべきだ』というところから始まっています。解剖学的・機能学的に見て筋肉はこう働かなくちゃいけないとか、走るときにこう動くのが一番効率的だとか。そういうベースから考えて、どう競技につながるかを考えている。つまり、トレーニングはスポーツの種類によるわけではなく、さらに言えば、プロも大学生もやるべきことは同じということです」
では、具体的には何に取り組むのか?
「機能的に動くには可動域も重要だし、体の安定性も、コーディネーションも大切。さらにモビリティとか、いろんなことが欠かせません。バランスよくすべてを兼ね揃えた体でなければならない。まずは目的が個別に切り離されたトレーニングをしてから、つなぎ合わせたエクササイズをやる。そうすると走る・止まる・飛ぶといった基本動作が効率よくできるようになります」
体幹だけでは不十分、動きの中で体を使うために。
日本では体幹トレーニングが流行しているが、あくまでそれは目的を個別に切り分けた“出発点”にすぎない。そこにモビリティなどの要素を足して、より動きの中で使える体にするのが、『アスリーツパフォーマンス』の流儀だ。
「テレビの前でできるような体幹のエクササイズだけでは不十分。動きの中で体を使えるようになりません。たとえば走るときにバランスを取るにはお尻の筋肉が重要なんですが、お尻が使えないと膝やハムストリングに負担がくる。それを防ぐには、たとえば両膝にゴムバンドを巻いて動くエクササイズがある。ゴムに負けないように両膝を外に開こうとすると、自ずとお尻を使うからです」
咲花は「ムーブメント」をキーワードにあげた。
「基本的な考え方は『ムーブメント』なんですね。まずは静的なポジション(姿勢)で、1つ1つの動きを確認する。それがモビリティやスタビリティのトレーニングだったりするわけです。そして次に3つくらいの動きが含まれたエクササイズをやります」