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グランドスラム準優勝で「謝罪」。
なぜ錦織圭の武器は機能しなかった?
posted2014/09/09 15:20
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
AFLO
「チームのみんな、ゴメンナサイ。今日はトロフィーを手にできなかったけれど、次は必ず取ります」
全米オープン、表彰式のインタビューで錦織圭は、家族招待席のコーチや仲間に詫びた。
テニスは個人スポーツだが、トップクラスの選手はコーチ、トレーナー、さらにはマネジャーなど数人がチームでサポートする。錦織はこの日、マイケル・チャン、ダンテ・ボッティーニの両コーチや中尾公一トレーナーら、献身的に支えてくれたメンバーに優勝の謝辞を捧げることはできなかった。
マリン・チリッチ(クロアチア)との過去の対戦成績は5勝2敗、今季に限れば2勝0敗だった。しかし、世界ランク3位のロジャー・フェデラーと7位のトマーシュ・ベルディハを破って勢いに乗るチリッチは、以前とは別人だった。
チリッチは17本のサービスエースを錦織に浴びせ、アンフォーストエラー(自分からのミス)を27本にとどめるなど、準々決勝、準決勝に続いて、ほぼ完璧なプレーを見せた。
「前の彼はもっと粗い選手だった。しかし、この大会ではサーブがより堅実になった。コートカバーリングもよくなっている」
準決勝でチリッチに敗れたフェデラーは、チリッチの格段の進歩をそう指摘したが、そのアタッキングテニスを初の四大大会決勝でも貫いた。
得意とするはずのロングラリーでも、形勢不利に。
だが敗因の第一は、錦織のパフォーマンスが最後まで上がらなかったことだろう。
錦織は完敗をこう振り返った。
「ずっと迷走している感じだった。全く先が見えない試合だった」
立ち上がりから、錦織のボールには準決勝までの伸びがなかった。ツアー屈指の敏捷性を披露する機会もほとんどなかった。錦織の武器が、武器として機能しない。ロングラリーで強みを発揮するのが錦織だが、ボールが何度も両者の間を行き来するうちに、徐々に形勢不利になる場面が多かった。