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日本競泳界の常識を越える萩野公介。
パンパシでもメダルラッシュなるか!? 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO SPORT

posted2014/08/16 10:50

日本競泳界の常識を越える萩野公介。パンパシでもメダルラッシュなるか!?<Number Web> photograph by AFLO SPORT

アメリカでの高地トレーニングから帰国した萩野は、「(成長した部分を)ひとつ挙げるとすれば背泳ぎです。無駄のない泳ぎを意識して取り組んできたので」とコメント。入江との再戦が楽しみだ。

萩野の存在感がライバルを奮い立たせた。

 萩野個人の強さはともかくとして、その存在自体も日本の競泳界にとって大きいものとなりつつある。彼が周囲に与える影響は、彼の活躍以上のものがあるとも言えるのだ。

 日本選手権のときのことだ。背泳ぎ100、200mで萩野を2位に抑えて優勝した入江陵介の印象的な言葉があった。

「萩野選手のおかげでいつも苦しい戦いをさせていただいております」

 冗談めかして言った入江は、こうも語った。

「苦しい時期もありましたけれど、萩野選手が出て来て簡単に勝たせてもらえないようになったりしたので頑張れると思います」

 背泳ぎのエースとして君臨してきた入江にとって、萩野の台頭もまた自身の推進力となっていたことがうかがえるセリフである。

 入江だけではない。昨年の世界選手権400m個人メドレーで金メダルを獲得した瀬戸大也もまた、萩野に刺激を受けてきた1人だ。ロンドン五輪出場を逃したことでダメージを負った瀬戸が再起できたのは、萩野のロンドン五輪での泳ぎにあったと言う。そもそも萩野とは同年代であり、小学生から競ってきた相手だ。ライバルの活躍と成長は自身を奮い立たせる要因となる。

 萩野の存在は、そういう意味でも日本競泳にとってとてつもなく大きいのだ。

萩野だからこそ得られる多くの“刺激”。

 実は他の選手たちが萩野に刺激を受けるのとともに、萩野もまた、彼らに刺激を受けている。

「入江君の横で泳いでいると、まだ粗いところが目立ちますね」

 平井コーチが語るように、萩野もまた入江ら世界でもトップクラスの選手と国内で競う中で、自身の欠点を見つめ直すことができる。切磋琢磨する関係をいくつも持てるのも、萩野が多種目で高いレベルにいる選手だからこそだ。

 6月のジャパンオープンでは、強化の目的からバタフライ2種目にチャレンジし、7月からはアメリカでの高地合宿で泳ぎの修正を図ってきた。その成果は、8月21日に開幕するパンパシフィック選手権で試されることになる。

「緊張しすぎで朝ご飯も食べられませんでした」と振り返る4年前とはまったく異なる立場で臨む今大会で、海外の強豪選手を相手にどのような泳ぎを見せるか、注目される。

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