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今シーズン自己最高の2位を獲得。
アロンソだけに可能な「ある作戦」。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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posted2014/08/16 10:40

今シーズン自己最高の2位を獲得。アロンソだけに可能な「ある作戦」。<Number Web> photograph by Getty Images

チームの戦略とドライバーの的確な判断、それを実行するドライビングスキルが揃い、フェラーリとアロンソは今季初めてトップ争いに参加した。

31周走ってのタイヤ交換で、残りも31周。

 ジャーナリストはその理由がわからないと言い、さらにこう続けた。

「しかもルイスは前日の予選はQ1しか走っておらず、そのとき履いていたタイヤがミディアムだったため、ソフトタイヤは新品の状態で4セットをレースで使用できたはず。

 1回目のピットストップ時に交換したソフトは31周走っていたのだから、39周目にピットインしたルイスは、残り31周をミディアムよりもペースが速いソフトタイヤで走り切ることが可能ではないか」

 確かに2位でフィニッシュしたアロンソだけを見れば、ハミルトンがなぜアロンソと同じ作戦を採らなかったのかという疑問を持つのも不思議はない。しかし、ハミルトンが行なった1回目のピットストップから2回目のピットストップまでの31周の中には、セーフティーカーランが4周含まれている。つまり、第2スティントでソフトで31周を走行していたからといって、最終スティントもソフトで31周を走りきれるという単純な状況ではなかったのである。

ベッテル、ベルニュらもミディアムを選択した。

 実際このレースでは、上位勢で2ストップ作戦を選択しながら2回目のピットストップでミディアムを選択したのは、ハミルトン以外にベッテル、ベルニュなどがいた。だから決して、ハミルトン陣営が採った戦略が間違っていたわけではない。

 一方、アロンソと同じ2ストップで、ドライ路面になってからソフトタイヤで走り続けたドライバーは、トップ10内でフィニッシュした中ではアロンソのほかにライコネンしかいなかった。ライコネンはタイヤ無交換時代の2005年の日本GPで、ファイナルラップにオーバーテイクを仕掛けて逆転優勝したほど、タイヤの使い方に卓越した技術を持ったドライバー。しかもこの日は16番手からスタートし、かなりリスクを犯した戦い方をしていた。

【次ページ】 エンジニアが語る、アロンソの「特殊技術」。

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