プロ野球亭日乗BACK NUMBER
白い歯も、過剰な演出も必要ない!
ギラギラした“夢の球宴”を取り戻せ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2014/07/11 10:30
160kmを連発している大谷翔平投手も、オールスターに選出されている。最高のストレートと、茶番劇。ファンがどちらを欲しているかは明らかではないだろうか。
今のオールスターの“おちゃらけ”は観るに耐えない。
ただそれでもなお、今のオールスターゲームの“おちゃらけ”には観るに耐えないという思いが湧いてしまう。
一昨年は、巨人の阿部慎之助捕手がチームメートだった大道典嘉外野手(現ソフトバンクコーチ)の物まねで打席に立ったことに猛烈な違和感を抱いた。
そして昨年の大阪桐蔭高出身選手による文字通りの“茶番劇”は、本当にファンを愚弄するものとしか感じなかったのである。
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それは第2戦の6回の出来事だ。
阪神・藤浪晋太郎投手と日本ハム・中田翔外野手の大阪桐蔭OB対決は、セ・リーグの話題のルーキー投手とパ・リーグを代表する長距離砲の対決だけに、力と力のぶつかり合いを期待したファンも多かったはずだ。
しかし、藤浪の初球は山なりのスローボール。そして2球目も同じような山なりボールを投げたところ、中田がバットを放り出してマウンドに歩み寄る真似をした――2球目のスローボールは捕手のサインだったそうだが、この“演出”が二人の先輩である阪神・西岡剛内野手の指令だったというのだ。
落合GMが問うオールスター自体の意味。
これを楽しいと思うファンもいるのかもしれない。ここに高校の先輩、後輩としての絆を感じて、「オールスターならではのパフォーマンス」と感じるファンもいるのかもしれない。
ただ、勝敗を越えた投手とバッターの対決というオールスターの醍醐味にとって、どちらか一方、ましてや両方から真剣さを排除してしまった勝負など、まったく魅力はない。昨年の茶番劇まで露骨ではないが、ここ数年のオールスターに何の訴求力も感じなくなったのは、そういうなれ合いの雰囲気が露骨に漂っているからなのである。
だから落合GMは10年以上も前から「今はそんな緊張感がなくて出場する意味があるのか?」とオールスターをやること自体の意味を問うていたのだろう。逆に言えばその言葉の裏側には、オールスターとはそれぐらいの価値あるイベントでなければならない、という落合流のアンチテーゼが込められていたようにも思う。