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清武、そして岡崎がスーパーサブに?
「右FW・大久保」がもたらす戦略の幅。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2014/06/04 12:15
ザック体制で最も多くのゴールを決めている岡崎慎司。ブンデスリーガ得点ランク7位タイの男が、攻守で日本の鍵を握っている。
清武「自分が入ることによって、流れを変える」
あの試合で岡崎と代わってピッチに立ち、チームにリズムをもたらしたのが、清武だった。清武が入ってから逆サイドにいた香川は、それまで以上にピッチ上を自由に動き回り、相手のDFラインの裏をついていくような動きが増えていった。香川は清武が入ってからの変化を、嬉しそうにこう語っている。
「キヨが見てくれるので、自分自身も裏への走りがいをすごく感じました。ああいう相手に対しては、(清武がいることで)自分は活きやすかったのかなと。岡ちゃんのときもそうですけど、キヨのときももっとコミュニケーションを取ってやっていきたいです。試合前から話していたことなので。だからこそ、あそこで1点獲りたかったですね」
清武自身は「ゴールが決まらなかったので……」と反省点を口にしつつも、自らの役割についてこう説明していた。
「正直、ゴールは欲しいし、それが一番の結果だと思いますけど、自分のやるべきことはたくさんあって、それが全てではない。右サイドのFWで出るからには、結果は常に欲しいなとは思いますけど、自分が入ることによって、流れを変えるということが今はもっとも必要かなと」
キプロス戦とコスタリカ戦の2試合を通して、大久保、岡崎、清武の3人は同じように右サイドのFWとしてピッチに立ちながら、異なるプレーを見せた。その意義は決して小さいものではない。
戦術を理解した上で、自らの良さを出していく。
思い出されるのは、以前、キャプテンの長谷部誠が新しくチームに入ってきた選手をいかにしてサポートするかについて問われたときに話していたことだ。監督の求める戦術をしっかりと実行することの大切さを説いたあとで、長谷部はこう語っていた。
「アピールしようとして、監督の言うことをやりすぎてしまうところはあるかもしれないですよね。でも、戦術を理解した上で、それぞれの選手が自分の良いところを出すというのが、大事なのかなと思います」
選手層を厚くすること。それはどんなチームにも求められることだ。日本代表にとって層を厚くするとはどういうことだろうか。
それは、代表の中に海外のクラブでレギュラーとしてプレーする選手の数が増えていくという単純なことではない。一つのポジションにタイプの異なる選手が控えているという状況を作り出すということだろう。