野球善哉BACK NUMBER
腕の振りが戻り、「第一段階」突破。
菊池雄星、高3夏以来の甲子園勝利。
posted2014/06/03 10:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
NIKKAN SPORTS
復活の狼煙とみていいのだろうか。
菊池雄星が、ようやく今季2勝目を挙げた。
5月29日の阪神戦に先発して6回6安打2失点。初回に先制を許したものの、それ以降を粘り切ってつかんだ2勝目だった。
「甲子園は気持ちよかったです。あんなに風が吹く球場だったかなって思いましたけど、このベンチで試合をしていたんだなって思うと、懐かしかったです。グッときました。ここで勝っていい機会にしたいっていう気持ちが強かったんで、勝ててよかったです」
高校3年夏以来となる甲子園での登板、そして勝利を「雄星復活!」と簡単に言ってしまうのは強引かもしれないが、改めて、今季の菊池を振り返ってみたい。
「絶対的」な力と、「相対的」な打ちにくさ。
昨季は前半戦で9勝を挙げながら、左肩を痛めて長期離脱。1年間フルに投げられるローテーション投手を目指してスタートした今季の菊池だったが、開幕前のオープン戦で少し気になることがあった。それは、菊池が左ひじの位置を従来より下げていたことだった。
「相手の打ち難さを考えて腕を下げてみたんです。相手に嫌がられることを考えるのも必要かなって」。
方法論としては理解できたが、この言葉に、菊池自身が打者に対して受け身になっているのではと思えたのもまた事実だ。
投手としての究極を目指して「絶対的」な力をつけるのではなく、相手と対峙して「相対的」に打ちづらい自分を作り上げる。高校卒業時にメジャーを志望した志の高さを思えば、その姿勢は、選手として守りに入っていると言わざるを得ない。
そして、オープン戦からシーズン序盤にかけて、菊池は迷走状態に陥った。
オープン戦の終盤、左ひじを下げたフォームで打ち込まれると、菊池はひじの位置を元に戻した。理由は「打たれたことではなくて、テークバックに行くときに気になる部分があって」ということだったが、場面によってひじの位置が下がるなど、不安定な場面が見られた。