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フィギュア採点の最難関を徹底解説!
ソチ演技で見る「演技構成点」とは。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2014/03/20 10:30
ソチ五輪男子シングルのフリープログラムの「音楽の解釈」で全選手中1位を獲得した高橋大輔。エキシビションに特別招待されたことの背景には、音楽表現への高い評価があった。
ステップや小技が評価される「つなぎ」。
次は「つなぎのフットワークと動作」。これは、ジャンプ、スピン、ステップシークエンスなどのすべての要素の間にある「つなぎ」の部分で、いかに複雑で多様な動作をしているか。ジャンプの前後にステップや演技が入るものが一番分かりやすいだろう。またフットワークだけでなく、上半身を大きく動かしてバランスが難しいポジションを取るなど、すべての小技が評価される。
難しいジャンプをするには、どうしても助走で構える時間が必要になることから、どの選手も5項目のうち最も低くなる傾向がある。「つなぎ」で他項目より高評価を得られる選手としては、ジェイソン・ブラウン(アメリカ)が有名だ。スパイラルをしてその足のまま3回転ルッツを跳ぶなど、ジャンプの入りが凝っていて、最初から最後までステップやターンが満載のプログラムを踊りこなす。
一方で、ソチ五輪団体戦では、エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)の「つなぎ」は4.5~9.25までジャッジによって点が分かれた。もともとプルシェンコは、旧採点法時代の選手ということもあり、細かい動作を詰め込むよりも大胆な技で華やかに演じるタイプ。もちろん新採点に対応して演技をブラッシュアップしてきてはいるが、背中の怪我の影響もあり、上体が常に真っ直ぐであまり動かさず、「前後左右への多様な動き」という点で欠けた。そのため、「ボディムーブメントが無い」とみなしたジャッジは4.5を、「フットワークは細やか」と考えたジャッジは9.25をつけた。平均すると、他の選手に比べると「つなぎ」の点は低く7.93だった。
羽生結弦がショートで9.5を獲得した「演技と実行」。
次は「演技と実行」。ここが一般的に考える「演技力」にあたる。ジャッジは、身のこなし、音楽を捉えた感情表現、そして選手独自の世界観などが素晴らしいものを評価する。もしジャンプでミスが多く、表現がぶつ切りになるようであれば、当然ながら一貫した世界観が崩れてしまうので、この項目は低く評価される。
例えば、羽生結弦が史上初の100点超えを果たしたショートでは、PCSのうち最も高く評価されたのは「演技と実行」で9.5。ブルース「パリの散歩道」のプログラムに合った、身体の動き、メリハリ、そして個性的な魅力に溢れていたということになる。一方のパトリック・チャンは、転倒のなかったショートでは「演技と実行」が9.32だったが、3つのジャンプをミスしたフリーは「緊張している」というのが見て取れるような演技だったため、8.93と、彼にしては低い評価となった。