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酒井高徳、順調な道のりと“踊り場”。
「全部良くしようとして止まってる」
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/12/13 10:30
酒井も勝利に貢献したベルギー戦で日本代表の評価はあがり、チームメイトから「(W杯で)日本と同じ組には入りたくない」と声をかけられたという。しかし11月22日のボルシアMG戦で酒井は2試合連続の先発落ち。チームは好調をキープしている。
「守備は必要だけど、一番の売りは攻撃の部分」
頭を悩ませている理由はいくつかある。
まずは、チームの目指すサッカーの変化だ。開幕前に酒井はこう話していた。
「自分の考えとコーチ陣のギャップもあった。自分としても、(チームのバランスがバラバラだったために心がけていた)自己犠牲のプレーをしても成果が出なかったのをすごく反省しているので。もう一度、酒井高徳というのがどういう選手なのかを自分で表現しないといけないと思う。
サイドバックとして守備はやらなきゃいけないけど、一番の売りは攻撃の部分でのアグレッシブさだったり、精度、攻撃に絡む回数、アイデアとかだから。結果だけでなく、そこにいきつくまでの過程も大事にしながらやっていきたいと思います」
しかし、開幕から1カ月もたたない8月26日、ラバディア監督が解任されてしまった。昨シーズンからチームの攻守のバランスが破たんしていたのは明らかだったし、多くの選手がラバディア監督への不満を抱えていた。
後任にシュナイダー監督が就任すると、これまでとは一転、守備での役割を求められるようになった。「サイドバックのポジションは1人のセンターバックとして考えて欲しいみたいなことを言われました」という。
代表で試合に出るのに必要なレベルが上がっている。
さらに、酒井の気持ちを焦らせるのは、今シーズン終了後に控えるW杯の存在だ。
サポートメンバーとして参加した2010年の南アフリカW杯のときには、ヨーロッパでプレーして、日本代表にコンスタントに名を連ねている現在の自分を想像していなかった。
しかし、酒井は日本代表のレギュラーを手にしたわけではない。南アW杯で日本の両サイドバックは、FC東京とジュビロ磐田の選手が担っていたが、現在はあのインテル・ミラノで中心となってプレーする選手と、シャルケに所属し日本人最多のCL21試合出場を誇る選手が君臨している。
「ホント、代表で試合に出ている選手はすごく尊敬しています。代表で試合に出るのに必要なレベルが上がったのは間違いなくある。でも、それはすごくいいことで、全てのポジションがワールドスタンダードに近づいてきてるのかなってのは感じる。やっぱヒロキ(酒井宏樹)もそうだし、他にも日本のリーグに良いサイドバックはいっぱいいるし。特に今回(11月の欧州遠征)も、こういう結果に終わってしまったので危機感を持ってます。見習うべき部分は見習って、少しでも彼らを脅かせる存在になりたいって気持ちはあるんで。そのためにもしっかりやらなきゃならないのかなって思います」