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W杯、欧州CLに続きアジアCLを制覇。
勝つほどに“若返る”名将、リッピ。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byGetty Images

posted2013/11/19 10:30

W杯、欧州CLに続きアジアCLを制覇。勝つほどに“若返る”名将、リッピ。<Number Web> photograph by Getty Images

4万2000人の大観衆を背に選手たちから胴上げをされるリッピ。

6試合で19得点、堂々とアジアを制圧。

 グループリーグの浦和レッズ戦で大会唯一の黒星を喫した際には、さすがにリッピも「戦慄した」というが、決勝トーナメントに入るとチーム自慢の攻撃力に火がついた。

 ベスト16ラウンドから準決勝までの6試合で19得点を奪いながら、セントラルコースト・マリナーズ(オーストラリア)、レフウィヤ(カタール)、そして柏レイソル(日本)といった各国の有力クラブを次々に撃破。広州恒大はライバルたちを蹴散らし、堂々とアジアを制圧したのだった。

 通算13得点のムリキは、大会得点王とMVPを獲得。8ゴールのコンカも得点ランク2位となり、準々決勝から出場したエウケソンは、ホーム&アウェーの決勝戦で貴重な2ゴールを叩き出した。

 彼らの活躍に沸くホームスタジアム「広州天河体育中心」は毎試合、大観衆によってクラブカラーの赤に染まった。

なぜ、リッピだけが中国で成功できたのか。

「“黄金に彩られた年金リーグ”という外野の声は聞き流すことにしている」

 中国サッカー界の金満ぶりは、長引く不況に喘ぐヨーロッパから見れば羨望の的だろう。高年俸に惹かれ、超級リーグへ“脱欧入亜”を試みた指導者は、リッピだけではない。

 リーグ・アン優勝経験のあるティガナは上海申花で昨年指揮を執り、長くイングランド代表を率いたエリクソンも今年になって広州富力へやってきた。中国協会は、元スペイン代表監督ホセ・カマーチョに、ブラジルW杯予選突破を託した。

 しかし、彼らはいずれも解任の憂き目に遭うか、志半ばで中国大陸から去った。今も残るエリクソンにしても目立った成績は残せていない。

 なぜ、リッピだけが中国で成功できたのか。

「中国には“勝ちさえすればあとは不問”という風土があった。だが、私は内容に不満があれば、選手たちを遠慮なく叱り飛ばした。弱い相手から勝ち点3を取って、それだけで満足しているようでは駄目だ、と。最初は大層驚かれたが、遅かれ早かれ、彼らは必ずわかってくれるはずだと信じていた」

 還暦を過ぎて地球の裏側へ渡ったリッピは、言葉の通じない相手との衝突を恐れず、広州恒大に欧州一流のメンタリティを持ち込もうとした。

【次ページ】 白髪の指揮官を今も突き動かす、苦い敗戦の記憶。

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