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W杯、欧州CLに続きアジアCLを制覇。
勝つほどに“若返る”名将、リッピ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2013/11/19 10:30
4万2000人の大観衆を背に選手たちから胴上げをされるリッピ。
イタリアの名将が、中国・広州の空に3度舞った。
11月9日、マルチェロ・リッピ率いる広州恒大は、FCソウル(韓国)との決勝戦を制し、今年のAFCチャンピオンズリーグ(以下アジアCL)王者となった。
中国のクラブがアジアの頂点に立つのは、前身のアジアクラブ選手権時代から数えて、1990年の遼寧FC以来、23年ぶりの快挙だ。選手たちから胴上げされた優勝請負人リッピは、シャンパンと汗にまみれたジャケット姿で宙を舞いながら、相好を崩していた。
17年前も、リッピはやはり淡い色のジャケットを着ていた。ユベントスを率いた1996年に、欧州CLを初制覇したときのことだ。同年末のインターコンチネンタル杯(=トヨタカップ)も優勝し、さらにイタリア代表監督として、2006年のドイツW杯で世界の頂点に立った。
欧州CLとW杯の両方を制した名将といえば、他にデルボスケ(R・マドリー/現スペイン代表監督)がいるだけだ。そして、南米に目を向ければ、現ブラジル代表監督スコラーリはリベルタドーレス杯を2度戴冠し、'02年日韓W杯でセレソンを優勝に導いている。
だが、この名伯楽2人にしても、今回リッピが達成した偉業には畏敬の念を抱くにちがいない。
「現代のアレクサンダー大王」と賞賛されたリッピ。
母国イタリアの『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、最大級の賛辞として、史上初めて異なる2大陸のクラブ王者タイトルを手にしたリッピを紀元前の偉人に喩えた。
「ヨーロッパと世界を制し、アジアをも征服した。リッピは、まさに現代のアレクサンダー大王だ」と。
昨年5月、年俸1千万ユーロという破格の好待遇で広州恒大へ迎え入れられたリッピは、中国代表選手9人と、南米からの助っ人として司令塔コンカとFWムリキを加えたチームを操り、初年度にして中国超級リーグと中国FAカップの2冠を達成した。しかし、初挑戦のアジアCLではベスト8に終わった。
2年目の今季、リッピは代理人である実子ダビデの仲介で、ブラジル代表経験もあるFWエウケソンを獲得。いよいよ本腰を入れて、アジアCLの王座を奪いにかかった。