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落合GM&谷繁監督のタッグは、
日本版『マネー・ボール』となるか? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/10/12 08:00

落合GM&谷繁監督のタッグは、日本版『マネー・ボール』となるか?<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2004~2011年の8年間、監督と主戦捕手という立場で4度のリーグ優勝を成し遂げた落合と谷繁。今後は、GMと選手兼任監督という新たな関係でチームの再建を目指す。

「GMっていう手がありますよ」と落合氏からの提案。

 この人事を断行した白井オーナーは、監督候補の一人としてリストアップしていた落合氏と会談した際に、腹案だった谷繁監督案を相談したところ、落合氏もこれを支持。また同時に、チーム再建のために落合氏に自分の顧問になってくれないかと要請すると、「GMっていう手がありますよ」と落合氏の方から提案があったと経過を明らかにしている。

 それからGMに関して白井オーナーが様々な資料を検討している中で出会ったのが、『マネー・ボール』とビリー・ビーンGMの存在だった。

「経費を少なく、おやっと思う選手を獲って生かして優勝させる。理想です」

 そして電話で『マネー・ボール』の話を振ると、映画通でもある落合氏は当然、知っていたというわけだ。

 ただ、落合GMが白井オーナーの求めるように『マネー・ボール』的手法でチーム改革を断行するとなると、谷繁新監督にとっては、なかなか難しい現実が立ちはだかるのではないだろうか。

 そもそもプレーイングマネージャーという立場の難しさは、直近のヤクルト・古田敦也元監督のケースでも明白である。

二足の草鞋を強いられる谷繁を助けるのは。

 キャンプでも、自分の調整をしながら、チームの隅々まで目を届かせるのは至難の業だろう(これは自らも兼任監督を経験している野村克也元楽天監督が再三指摘する点である)。また実際のゲームになれば、マスクをかぶりながらデータチェックをして、個々の守備陣形や様々な決断をすることは不可能に近い。攻撃面でも、いわゆる「代打、オレ!」的な局面を含めて、監督と選手の立場を使い分けることの難しさは想像以上のものがあるはずである。

 となると、采配面をきっちりフォローするベンチコーチの役割が非常に大きくなるが、そこに就任するのが落合GMの腹心中の腹心である森繁和ヘッドコーチになるのだ。

 そういう意味では谷繁新監督色というより、いきなり落合GM色の方が強いチームになりかねない。うがった見方をすれば、兼任監督の方が森コーチを通じてGMとしての意見を現場に反映させやすいから、落合氏は谷繁監督を支持したともとれる状況なのである。

【次ページ】 選手と監督として、2人には信頼関係があった。

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