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違和感があった長谷川穂積の世界戦。
フェザー級転向で生じた誤算の中身。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byKYODO

posted2010/11/30 10:30

違和感があった長谷川穂積の世界戦。フェザー級転向で生じた誤算の中身。<Number Web> photograph by KYODO

自身のブログで「おれ、お疲れさん」と綴った長谷川。「おれにはなにも返すことはできないですが、少しでも試合で喜んでもらえるようにもっと強くなります」とファンへの感謝を記した

長谷川陣営も予想外だったという真っ向勝負。

 確かに勝負の世界では相手の裏をかくことも大事だ。しかし、真っ向勝負は陣営にとっても予想外のボクシングだった。長谷川の参謀、真正ジムの山下正人会長の言葉がそれを裏付けている。

「小さく打つように練習してきたけど、大きくなってしまったね。まあ今日は何が何でも勝ちたかったから良かったけど。この戦い方じゃ、次にジョニゴン(ジョニー・ゴンザレス=次戦で対戦予定。長谷川が4月に敗れたフェルナンド・モンティエルに勝利した経験あり)とやっても無理かなと」

 事実、長谷川はクリーンヒットの数で終始上回っていたとはいえ、ブルゴスのパンチも少なからず被弾した。7回にはブルゴスの左アッパーをもろに食らい、足元をぐらつかせるピンチも迎えている。本来の長谷川の力量からすれば、注意さえ払えば十分に回避できたピンチだったろう。

階級アップを意識し過ぎるあまり、戦い方が狂っていった!?

 なぜ長谷川はリスクを冒し、危ない橋を渡らなければならなかったのだろうか。その要因はやはり階級アップにある。

 シャープなコンビネーションを忘れ、大振りになってしまった原因の一つは、バンタム級とフェザー級の距離の違いだ。ブルゴスと長谷川の身長差は6cmほど。バンタム級であれば届いたパンチがフェザー級では届かない。それを無理に当てようとするから、自ずと振りが大きくなりミスブローも増えた。たとえ捉えたと思ったパンチでも、バンタム級のときより当たりが浅いから、思ったよりもダメージを与えることができなかったのだ。

 相手が大きく、パワーもある、という潜在意識も長谷川のボクシングを微妙に狂わせた。4月までバンタム級で戦っていた長谷川は、2階級上になるフェザー級選手との対戦経験がない。経験がないが故に、フェザーという階級を過大に評価した。いつもより力強いパンチを打たないと相手に打ち負けてしまう、という心理が無意識に働き、パワー勝負になってしまったのである。

【次ページ】 周囲の期待に応えながら進化し続ける長谷川穂積。

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