ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
違和感があった長谷川穂積の世界戦。
フェザー級転向で生じた誤算の中身。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKYODO
posted2010/11/30 10:30
自身のブログで「おれ、お疲れさん」と綴った長谷川。「おれにはなにも返すことはできないですが、少しでも試合で喜んでもらえるようにもっと強くなります」とファンへの感謝を記した
周囲の期待に応えながら進化し続ける長谷川穂積。
そしてもう一つ、長谷川は言及しなかったが、試合を盛り上げたい、ファンを喜ばせたい、という気持ちも強くあったのではないだろうか。
2週間ほど前、身長差11cm、リーチ差13cmという圧倒的な体格差を克服して史上2人目となる6階級制覇を達成したフィリピンのマニー・パッキャオは、試合後に次のようなコメントを残している。
「できるだけ真正面から打ち合おうと思った。観客に興奮を与えるためにね」
もともと技巧派でKO勝利の少なかった長谷川は、世界王者になってからKOを量産するようになった。それは高まる周囲の期待に応えようとボクシングを「進化」させた結果だった。その姿勢はパッキャオ同様、たとえ階級アップでリスクが高まっても、譲ることのできないテーマだったのかもしれない。
「今日は初めてのフェザー級でいろいろなことがわかった。バンタムは強いボクシング、フェザーはうまいボクシング。次はうまいボクシングをせなあかんですね」
聡明なサウスポーはすべてを理解しているのだ。
来春にも予定されている初防衛戦では、大胆かつ細心な長谷川らしいファイトを見せてくれるに違いない。