野球クロスロードBACK NUMBER
混戦のパで首位に躍り出た楽天。
チーム防御率最下位でもなぜ強い?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/07/10 12:00
聖澤は、藤井栄治(当時阪神)が持つ外野手の最多連続守備機会無失策記録である817を抜けるか?
「この状況ならばこういうプレーを」という意識の共有。
藤田が、このプレーの意図を説明する。
「バッターランナー(陽)は足が速いので。ファーストランナーにタッチしてから一塁へ投げる選択肢もありましたが、それだと間に合わなそうだったので、あのプレーを選びました」
ふたつのプレーには藤田が絡んでいた。「守備の名手」と呼ばれる選手だけに、それほどの驚きはないのかもしれない。しかし、彼は内野手全員のレベルの高さを強調するように、こう付け加える。
「『この状況ならばこういうプレーを』という意識は普段からみんなあります。例えば、点差とかゲームの展開を把握するのは当然ですけど、ランナーのリードが小さい、スタートが遅いとか、そういう細かいところまで見た上での状況判断を共有できているし、実際にプレーとしてもできている。そこが、守備の安定感に繋がっていると思います」
今の楽天の強みは、これら積極果敢なプレーが「当たり前」になっていることだ。
昨季は13失策した銀次が「前向きにプレーできている」理由とは?
「特別なことは何もしていないと思うんですけどね。自分としては、処理できるボールはしっかりする。アウトにできるプレーは確実にアウトにする。チームにとって当たり前のことをやっているだけなんですよ」
そうサラッと言ってのけたのは銀次だ。
昨季、126試合に出場し失策が13という数字が物語るように、彼は「守備が課題」と言われてきた。しかし今季は、前年同様、ファースト、セカンド、サードと3つのポジションを守りながら、ここまで62試合で失策はたったの3。数字だけを見れば劇的な変化といえるだろう。
銀次は「当たり前」と言いながらも、自分なりに守備向上の理由を導き出し、このように述べる。
「どんな状況でも、ベンチが『行けるぞ』という雰囲気を出してくれているのが守備にも影響しているのかもしれません。負けている時でも嶋さんをはじめ、AJ(アンドリュー・ジョーンズ)やマギーとかが常に声を出し続けてくれるので、守備も含め前向きにプレーできているのはありますね」