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混戦のパで首位に躍り出た楽天。
チーム防御率最下位でもなぜ強い?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/07/10 12:00
聖澤は、藤井栄治(当時阪神)が持つ外野手の最多連続守備機会無失策記録である817を抜けるか?
外野の名手・聖澤が大事にしている「2割の遊び心」。
雰囲気。楽天にとってこれも、守備へのモチベーションとなっているのだ。
5月25日の広島戦で、守備機会連続無失策659のパ・リーグ新記録を樹立し、現在もその数を伸ばしている外野のスペシャリスト・聖澤諒も、そのことを第一に挙げていた。
「客観的に見るとそうだな、と感じます。去年だと、先制されたり3、4点差をつけられてしまうと、チーム全体の空気が沈んでしまうこともありましたけど、今年は打線が点を取れるし、ピッチャーも粘ってくれるんで、『行ける』という雰囲気が常にあるのは間違いないです。それが、守備の集中力にも繋がっているのかな、とは思います」
そういったチームの雰囲気は、聖澤自身のプレーにも好影響をもたらしているようだ。
「今は、8割が一生懸命で2割は遊び心のあるプレーができているんです。僕としては、この2割が大事で。『一歩目を大事に』『いいスタートを切ろう』とか、100%一生懸命になりすぎると気持ちが窮屈になって、いつもならできるプレーができなくなるというか。今年はチームの雰囲気がいい分、心に余裕が持てるので、いい意味で楽に守備ができている感じはありますね」
細かい状況判断を当たり前に遂行できる守備。それを後押ししてくれる前向きなチームの雰囲気。楽天にとって守備は、今や大きなストロングポイントとなっている。
近年、リーグトップの守備率を誇った昨季の日本ハムのように、守備力が安定したチームが優勝していることを考えると、今季の楽天に期待せずにはいられない。
球団初のリーグ制覇を語るにはまだ早計だろう。しかし、勝利の確固たる要素となる武器を手にした楽天には、その可能性が十分にある。