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ブルガリア戦は何が問題だったのか?
豪州戦を前に喫した敗北の意味。 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/05/31 11:45

ブルガリア戦は何が問題だったのか?豪州戦を前に喫した敗北の意味。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

本田圭佑不在の2試合で連敗。ホームに大観衆を集めながら、勝ちにいく姿勢をほとんど見せられないまま敗北した。

3-4-3はテストではなく、勝ちに行ったザッケローニ。

 試合中ずっと考えていた。

 何故、ザッケローニはまだオプションとして確立していない3-4-3を後半からではなく、スタートから使ったのかを。

 オーストラリア戦直前に合流する本田圭佑のコンディションを考えると、別バージョンの可能性を見ておきたいという考えもあっただろう。オーストラリアに対する陽動作戦という意味もなくはないのかもしれない。サイドを有効に使え、というメッセージもあるだろうか。

 ただ、試合を終えてふとある思いが浮かんだ。指揮官のなかで3-4-3がスムーズに行くという計算はなかったはず。久々のテストであり、それも相手は国内組中心といっても、W杯欧州予選でグループ2位につけているブルガリアだったわけだから。

 むしろ最初3-4-3でうまくいかなくても、後半にいつものやりやすい形で巻き返していくことができれば、それはそれでオーストラリア戦につながるのだ、と考えていたのでは、と。

 だがザッケローニは試合後の会見でこう言っていた。

「ときに、負けというものは良いものだという意見もあるが、私はまったくそう考えていない。私は負けるのが好きではない」と――。

 最終予選の先を見据えて3-4-3をテストしたわけではない。あくまでザッケローニはオーストラリア戦に向けて、このシステムを使った。そして勝ちにいったのである。

膿はすべてこのブルガリア戦で出し切ったと、信じたい。

 指揮官は、後がないオーストラリアとのメンタルの温度差を気にしてきた。「軽い気持ちで向かうと痛い目に遭う」と言い切ってもいる。

 彼は昨年6月に最終予選3連戦でいいスタートを切った要因について「プレッシャー」を挙げていた。2月のウズベキスタン戦に敗れて危機意識が高まっていたことと、結果を残さなければいけないという思いが強いプレッシャーとなり、それがチームのパワーを生み出していたと解釈した。ゆえにこの3—4-3もザッケローニならではの、プレッシャーの掛け方のひとつではないか、とも思えてしまう。

 この痛い敗北を、もはやプレッシャーにするしかない。

 ミックスゾーンに現れた川島は、己を責めていた。

「無回転で来るのはわかっていた。難しいボールではあったけど、止めなければいけなかった。次の試合に向けてもそうだし、3-4-3のチャレンジという意味でも、ああいう形で失点してしまったのは自分の責任です」

 下を向かなかったのは、オーストラリア戦に対する“リベンジ”の思いが強いからだろう。悔しさが滲み出ていた。

 数々の修羅場を潜ってきた遠藤保仁は淡々とした口調ながら「気持ちを切り替えなきゃいけない」と強調する。

「こういうときは(気持ちを)引きずるのが一番良くない。いいときのイメージを持つことが大切になってくると思う。一番重要なのは、次の試合。練習からいい緊張感を持って取り組んでいければいい」

 そう、オーストラリア戦に向けて、大事になるのはこれから。

 気持ちの甘さ、必要以上の余裕――。

 膿はすべてこのブルガリア戦で出し切ったと、信じたい。

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