日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
ブルガリア戦は何が問題だったのか?
豪州戦を前に喫した敗北の意味。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/05/31 11:45
本田圭佑不在の2試合で連敗。ホームに大観衆を集めながら、勝ちにいく姿勢をほとんど見せられないまま敗北した。
豊田スタジアムに降り注いでいた雨はいつしか上がっていた。
しかしブルガリア戦の結果は、“雨のち晴れ”とはいかなかった。
スコアは0-2。
シュート数は15対6でチャンスの数は日本が上回った。失点は無回転のブレ球FKを弾きそこねた川島永嗣のミスと、FKをクリアし損ねた長谷部誠のオウンゴールによるもので、決して日本の守備が崩されたわけではない。防戦一方だったわけでもない。これだけ書けばアンラッキーの敗戦だったように見えるかもしれない。
だが違う。アンラッキーでは片づけられない、重い重い敗戦であった。
「W杯をほぼ手中に収めている」という心の隙がなかったか。
何が一番問題だったか。
筆者がピッチを眺めながら感じたのは「必要以上の余裕」だった。
5月30日に行なわれたキリンチャレンジカップ、ブルガリア戦。この親善試合の5日後には、ブラジルW杯出場がかかる大事なオーストラリア戦が控えていた。日本に勝たなければ予選を自動通過する2位以内の確保が難しくなるオーストラリアは、目の色を変えて勝ち点3を奪いにくる。対して日本は最終予選残り2試合で勝ち点1以上を取ればよく、連敗しても他カードの結果によっては突破が決まる可能性がある。
でもW杯予選は何が起こるかわからない。我々はドーハの悲劇という教訓も得ている。オーストラリア戦は何が何でも勝ちにいく。ホームで決める。これはアルベルト・ザッケローニ、そしてメンバー全員がその気持ちで一致している。
ならば、だ。
窮地に立たされて必死にやってくるオーストラリア相手に何が大事になってくるか。大雑把に言えば、オーストラリアの気迫に負けない気迫で戦うことである。
ブルガリア戦はあくまで親善試合。ここで100%の力を見せてほしい、などと言うつもりはない。気持ちの余裕があることも、むしろいいこと。ただ選手たちの心のどこかに、「W杯をほぼ手中に収めている」という思いがなかったか。そんな心の隙がなかったか――。