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ブルガリア戦は何が問題だったのか?
豪州戦を前に喫した敗北の意味。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/05/31 11:45
本田圭佑不在の2試合で連敗。ホームに大観衆を集めながら、勝ちにいく姿勢をほとんど見せられないまま敗北した。
ヨルダン戦でも露呈したセットプレーの課題が再び。
たとえば前半3分、FKで先制点を許してしまう場面。
ブレ球の鋭いキックに対して川島はパンチングで弾き飛ばそうとする選択をしたが、雨に濡れたボールを考えればキャッチングの体勢でボールを下に落とすイメージの方が無難だったのかもしれない。そんなことは経験のある川島にしてみれば百も承知だろうし、最初のシュートという難しさもあった。だが、川島ならばここは絶対に止めてほしかった。危険な場所でファウルしないでくれよ、と周りに睨みを利かせながらハッパをかける意味でも……。
どこかに心の準備を済ませていない隙がなかったか。
たとえば後半25分、追加点を奪われる場面。
再びセットプレーのチャンスを与え、右サイドからの速いボールに対して、ニアで誰も触れずに中央に入ってきたボールを長谷部誠がクリアできず、オウンゴールになってしまう。後半途中から入ってきたゲオルギ・ミラノフに対してノーマークになっていたため、慌てて長谷部が対応しようとしたところでの失点だった。
ヨルダン戦でも露呈したセットプレーの課題。ここでクリアにしておきたかったのに、マークの受け渡しという部分で隙はなかったか。
0-2とリードされ、目が覚めてくれると期待したが……。
だが、個人的にはここから期待したいという思いがあった。
これでようやく目が覚めると思ったからだ。意地でもブルガリアの堅い守備をこじ開けようとする姿を見ることができるはず――。
オーストラリアに0-2でリードされるという展開は十分に考えられる。甘い気持ちに気づかされ、猛反撃をするザックジャパンの姿が目に浮かんだ。たとえ負けても、一矢報いれば、それはそれで収穫になる。
実際、どうだったか。
まず2失点目を喫した後のこと。頼れるキャプテンが失点に絡んでしまったことで、すぐに誰かが大声を出して、手を痛くなるほど叩いて鼓舞しなければならなかった。長谷部を励ますことで、長谷部が声を出しやすい環境をつくってもよかった。
だが、逆に下を向いてしまっていなかったか。ひょっとしたら筆者が見落としているのかもしれないが、見渡した限りにおいてそんな光景が目に飛び込んではこなかった。
ブルガリアが引いて守備を固めてきたため、攻略する難しさは確かにあった。しかし、バックパスが多く、ボールが前に行かないもどかしい展開ばかりが続いた。ゴールへのベクトルが強調されないまま、時計の針は進んでいく。終了間際、裏に抜け出してボールを受け取った長友佑都がゴールに流し込んだが、これはオフサイド。こんな場面をもう少し先に見ておきたかった。結局、ネジが巻かれないままタイムアップとなった。
目が覚めなければならないシチュエーションで、目が覚めなかったのが何よりも残念でならなかった。