ネット裏甲子園BACK NUMBER
“8号門クラブ”の夏は終わらない!
高校野球に取り憑かれた男たち。
~あの“ラガーさん”が引退発言か!?~
text by
芦部聡Satoshi Ashibe
photograph bySatoshi Ashibe
posted2010/08/20 06:00
本物だけが理解できる、8号門クラブの重要性とは?
皆見龍太さんも、仕事と全試合観戦を両立させている数少ないツワモノのひとりだ。いただいた名刺には「8号門クラブ 京都支部・滋賀支部担当責任者」との肩書がある。
「それは勝手に名乗ってるだけ(笑)。自分は滋賀県に住んでるし、高校も宇治の立命館だったということもあって、近畿圏の高校は気になりますね。地方大会はもちろん、練習試合を見ることもある。○○高校は監督が交代してから強くなってきたとか、そういった細かい情報はインターネットを探しても分からないですからね」
足で稼いだコンフィデンシャルな情報は、善養寺さんをはじめとする他県在住の8号門クラブのメンバーと共有する。蓄積された情報は分析され、全国の勢力図はつねに最新のものへと更新されていく。8号門クラブが諜報機関であればたいしたインテリジェンス集団だろうが、その重要性や意義を理解できるのは高校野球マニア以外には存在しないのが残念である。
センバツに向けた8号門クラブの戦いはもう始まっている。
「自分は8号門歴2、3年の新参者なんですが、ここに並びだして最前列で観戦するようになってから、急激にハマっちゃいまして……。今年は抽選会の会場にも行ってきました。地方大会をチェックするようになったのも、ごく最近のことなんですが、地方には甲子園にはない楽しみもある。選手との距離が近いから話す機会もあるし、自分が撮った写真をプレゼントすると喜んでもらえたりもする。お礼に非売品のグッズをいただくこともあるんですよ」
この日着ていた興南高校の春のセンバツ優勝記念Tシャツと応援団用のオレンジの帽子も、今春のセンバツのときに撮った写真を差し上げたお礼にもらったものだという。ごくふつうの高校野球ファンだった皆見さんは、こういった経験を積み重ねて、押しも押されもしないエクストリームなマニアへと急成長していったのである。
「家に帰ったらハードディスクに撮り貯めておいたテレビ中継をブルーレイにダビングしないといけないし、CSのスカイ・Aの映像はNHKとちょっと違うのでそれもチェックしないといけないし、甲子園が終わってもやることはたくさんある(笑)。それに来春のセンバツ出場がかかった秋季大会がすぐにはじまりますからね。つぎに向けた戦いは、すでにはじまってるんです!」
2週間にわたって繰り広げられた夏の甲子園は、数々のドラマを残して今年も幕を閉じる。だが、8号門クラブの“熱闘裏甲子園”は、はてしなく続いていくのである。