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なぜグアルディオラを選んだのか?
バイエルンが求める“革新”と“安定”。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/04/20 08:01
今年1月、FIFAバロンドールの表彰式でのグアルディオラ。運命のいたずらか、今年のCL準決勝では古巣バルセロナと来季から率いるバイエルンが激突することとなった。
“史上最強”バイエルンを率いるのは退屈なハインケス。
今季、バイエルンは早々にリーグ優勝を決めた。そのため、ファンの期待と注目は来季のチームに集まっている。バイエルンの幹部たちがインタビューなどでグアルディオラを語る機会も増えてきた。
これまで日本ではグアルディオラを主語にした報道が中心だった。なぜ彼はバイエルンを選んだのか、と。しかし、バイエルンを主語にして、なぜバイエルンはグアルディオラを選んだのかを考えてみると、違ったものが見えてくるかもしれない。
ハインケス監督のもと、バイエルンは4月6日にリーグ優勝を決めている。6試合を残しての優勝は史上最速だ。今季のバイエルンは数々の記録とともにある。開幕8連勝も新記録。アウェイでの勝利数(現在13勝)やリーグ戦連勝記録(現在12連勝中)は記録を更新中でどこまで数字が伸びるか注目されている。
さらに、最多勝ち点、勝利数、最少失点、最多得失点差、無失点試合数などのシーズン記録も打ち立てる可能性が高いと見られている。ライバルチームの監督たちが口にする「ブンデスリーガ史上最強のチーム」という賛辞はお世辞ではない。
ただ、ハインケスの指揮していた2年間は、革新的なことの起きない退屈な日々だった。
「ゴッドファーザーになろうとした」ファン・ハール。
歴代最高齢の67歳で優勝チームの監督となったハインケスが取り組んだのは実にシンプル。チームが持っている力をコンスタントに発揮できるようにすることだった。
攻守の切り替えを早くして、スター選手たちに敬意を持って接して気分良くプレーさせる。あるいは、ノイアー、マルティネス、ダンテ、ボアテンクなど、すでに評価の定まった選手を移籍で獲得して、チームになじませる。ハインケスはチームが持っている100の力のうち、コンスタントに90以上出させる手腕に長けていた。
だが、「ブンデスリーガ史上最強のチーム」の礎を築いたのは、ハインケスではない。ハインケスが来る前の2シーズンに指揮を執ったファン・ハールだ(ただし、'10-'11シーズンに途中解任)。
「ファン・ハールは監督の座にとどまらず、ゴッドファーザーになろうとしたんだ。他人の意見には耳を傾けることはなかったし、クラブ内で神のような存在になろうと目指していた」
ヘーネス会長は解任に踏み切ったファン・ハールの問題点を端的に指摘する一方で、彼の功績について断言する。
「彼は監督としてはとても優秀だった」