セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イカルディ、ポグバ、ニアン……。
セリエAで世代交代が劇的に加速中!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/04/18 10:30
今年1月、王者ユベントスから2得点を奪い、チームを勝利に導いたサンプドリアのイカルディ。
ベテラン天国だったはずのセリエAで、U-20世代の台頭が今季著しい。
開幕時にはまだティーンエイジャーだった彼らの中で、とりわけ鮮烈なインパクトを与えているのが、サンプドリアのFWイカルディだ。
今年1月、サンプドリアは敵地トリノで王者ユベントスを2対1で破る大金星を挙げた。退場者を出した味方の劣勢をものともせず、イカルディはGKブッフォンの守るゴールを2度も破った。昨年11月のダービーで初ゴールを決めた19歳が成し遂げた大仕事に、ジェノバの街は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
“シンデレラボーイ”イカルディの勢いは止まらず、22節ペスカーラ戦では1試合4得点の離れ業を達成。FWとしてのポテンシャルはもはや疑いようがなく、サベージャ監督率いる母国アルゼンチン代表への初招集も目前とされている。今夏市場での争奪戦は必至のようだが、来季インテルへ移籍することはもはや公然の秘密だ。
イカルディは“バティストゥータ2世”を目指す。
彼は'01年に経済破綻したアルゼンチンを後にして、スペインのカナリア諸島へ一家で移り住んだ。地元クラブでプレーするうち、バルセロナのカンテラへスカウトされた。決め手だったのは、故郷を同じくするFWメッシから「いっしょにやろう」と書かれたサイン付き写真カードをもらったことだった。
'08年からバルサのカンテラで過ごした2年半、少なくない数のゴールを決めた。しかし、イカルディはバルサでの未来図が描けないことを知っていた。
「バルサのプレースタイルに、センターフォワードはいらない。あのイブラヒモビッチですら成功できなかった。カンテラで僕のように高さとフィジカルを武器にしていた攻撃の選手たちは皆、クラブを去っていったよ。僕のプレースタイルではあそこにポジションはなかった」
'11年夏に移籍したサンプの下部組織では、徹底した走り込みが待っていた。「スペインと比べると、イタリアはとにかくDFとの肉弾戦がきついよ」と快活に笑い飛ばす。
バルサを出たことに後悔も未練もない。同郷のメッシを自分の成功モデルに見立てようとも思わない。イカルディが目指すFW像は、'90年代のセリエAを席巻した母国の英雄バティストゥータなのだ。