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なぜグアルディオラを選んだのか?
バイエルンが求める“革新”と“安定”。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2013/04/20 08:01

なぜグアルディオラを選んだのか?バイエルンが求める“革新”と“安定”。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

今年1月、FIFAバロンドールの表彰式でのグアルディオラ。運命のいたずらか、今年のCL準決勝では古巣バルセロナと来季から率いるバイエルンが激突することとなった。

 きっかけはおよそ2年前。ミュンヘン近郊のインゴルシュタットに本社を持ち、バイエルンとバルセロナのスポンサーを務めるアウディ社主催のプレシーズンマッチだった。

 このとき、アリアンツ・アレナに設けられたVIPルームで、当時バルセロナの監督だったグアルディオラと、バイエルンのヘーネス会長、ルンメニゲ社長はコーヒーを飲む機会があった。ヘーネスが当時を振り返る。

「あのとき、彼が『いつかバイエルンで仕事するのを想像できる』と言ったんだよ。その言葉が我々の頭の中にずっと残っていたんだ」

 昨シーズン終了後にグアルディオラがバルセロナの監督の座を退くと、彼らはグアルディオラ獲得にむけて動きだす。10月にはグアルディオラの弟で代理人を務めるペレ氏とルンメニゲ社長がバルセロナで会談を持った。こうして本格的な交渉が進んでいく。

「まぁ、バルセロナの空港は大きいから身を隠す分には良い感じだよ。私は(変装用の)サングラスをかける必要がなかったからね(笑)」

 そのようにルンメニゲ会長は振り返る。

 そして、12月20日。ヘーネス会長はルフトハンザの飛行機でグアルディオラが居を構えるニューヨークへ飛んだ。

グアルディオラがバイエルン監督就任を決めたNYでの会談。

 企業の重役などが利用する、ニューヨーク市内の高級イタリアレストラン「チプリアーニ」で顔をあわせようとヘーネスが提案すると、グアルディオラはやんわりとその申し出を断った。

「ウリ(ヘーネスのファーストネーム)、それはいいアイデアじゃないですよ。この街は観光客がうようよしていますから」

 交渉は秘密裏に行なわれないといけない。グアルディオラはカーテンのついた黒塗りのリムジンをヘーネスの泊まっていたホテルへさしむけた。2人が向かったのは、グアルディオラの自宅だった。グアルディオラの妻のクリスティアナが振る舞うスペイン料理を食べながら、3、4時間ほど談笑した。

 そして、グアルディオラは英語でこう切り出した。

“Shall I sign now?”

 ヘーネス会長が返す。

“This is a perfect idea!”

 そんな映画のワンシーンのようなやりとりでグアルディオラの就任は決まった。

 それから4カ月。グアルディオラは着々と監督就任の準備を進めている。バイエルンのルンメニゲ社長が説明する。

「彼はいま、自宅で毎日のようにドイツ語の家庭教師をつけて勉強している。すでにSMSやEメールはドイツ語を使って送ってくるんだよ。どんなに遅くとも今度のクリスマスまでには言葉の問題もクリアになるだろう」

【次ページ】 “史上最強”バイエルンを率いるのは退屈なハインケス。

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