野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
みるみる連勝、みるみる連敗。
ヤクルト“ミルミル野球”を見逃すな!
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/07/07 11:20
小川淳司監督代行就任で気がつけば6月は月間首位。
ところが。
5月27日に小川淳司ヘッドコーチが監督代行に就任すると、チーム状態が好転。
交流戦後半の6月9日~14日で5連勝を飾り、5位に上昇。
交流戦が終わってからも、6月26日~7月3日までに5連勝。
気がつけば6月は14勝8敗で月間首位。これまた、みるみるうちに同率4位まで順位を上げてきたのだ。
ジェットコースターのように好不調の波が激しい今季のスワローズ。「強い!」と思えば大型連敗、「弱い」と思えば連勝。勝っても負けても勢いがついたら止まらない。掴みどころのないこの野球を何か喩えるならば……もはや、みなまで書く必要もなかろうが、あえて書く。
今季のスワローズの野球は「ミルミル野球」である、と。
救援陣に空いた穴を4年目の増渕が見事に埋めた。
一時はどん底の状態まで落ちたスワローズが、なぜ再起を果たすことができたのか。
不調だった先発投手陣の復調や、青木、田中、相川の打撃好調なども考えられるが、最大の要因は増渕、松岡、林の救援投手陣が確立されたことであることは間違いない。
かつての阪神のJFK、今季もオリックスのJHK(J・レスター、平野、岸田)、ソフトバンクのSBM48(攝津、B・ファルケンボーグ、馬原、甲藤)など、近年の野球界では終盤の7、8、9回を凌げる「勝利の方程式」と呼ばれる救援陣の仕事ぶりが、試合を有利に進める条件となっている。昨年のヤクルトも、松岡、五十嵐、林の救援陣が機能し3位となったが、今季は、五十嵐がFAで抜けてしまい、救援陣に穴が空いてしまっていた。4月、5月の不振はシーズン前から懸念されたこの穴が埋められなかったことが一因ともいえよう。
その穴を4年目の増渕が見事に埋めた。
「ハンカチ世代」の高卒ドラ1としてルーキーイヤーから期待を受けていた増渕は、先発としてなかなか力を出せず、昨年はケガもあって1試合のみの登板で終わっていた。
今季は開幕から中継ぎで登板し、150kmをマークするなど球威も戻っていたが、大きな転機となった試合があった。6月7日のロッテ戦。打者4人に2本塁打を含む4安打と一死も取れずにKO、10連続安打の日本記録にも貢献してしまうというオマケもつく屈辱の登板だった。 その登板の後に、増渕はこう語っている。
「自信のある真っすぐを打たれたらしょうがない。気合いを入れて思い切り腕を振るだけ」。開き直った結果、威力あるストレートを中心とした力の投球で、その後の5試合を無安打無失点。林と松岡の前の7回に増渕を起用することを決めた小川監督代行からも、「最近は自信を持って投げている。イニング途中からでも頼る場面が出てくる。もう完全に任せられる」と信頼を勝ち取り、新救援陣の一角の座を確たるものにした。