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フェラーリとマクラーレンが逆襲!?
今季F1界のテーマは「革新vs.保守」。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2013/03/10 08:01
フェラーリの新型マシンF138をテストしたアロンソは「そこそこ満足している」とコメント。
両チームがテストでトップタイムを出さなかった理由。
'12年シーズンから今シーズンにかけて、マシン製造に関する技術レギュレーションに大きな変更はない。しかも、F1は来年の'14年に大きな変更が実施されるため、今年のマシンの開発費や人材は必要最小限にとどめておきたいところだ。
それにも関わらず、フェラーリとマクラーレンは大胆な変更をマシンに施してきた。
今年最後のウインターテストでトップタイムが記録できなかった一因には、新しいコンセプトで作られた新車のデータ収集に重点を置いていたからである。
ウインターテストでそのようなシーンが見られたのは、今年が初めてではない。'06年シーズンが始まる前にも、似たようなことがあった。
常識を覆す新タイヤを開発した'06年のブリヂストン。
それはまったく新しいタイヤを投入しようと、ブリヂストンが苦戦していたときのことだった。前年のブリヂストンはわずか1勝に終わり、名門タイヤメーカーとしては勝つために大きな飛躍を行う必要があった。
当時のブリヂストンのF1タイヤは“ヒステリシス”という理論でグリップ力を上げていた。ヒステリシスとは、ゴムの摩擦力を利用するという考え方で、タイヤの開発においては常識ともいえる手法であり、その手法で作られたタイヤでフェラーリとともに黄金時代を築いた。ところが、'05年にミシュラン勢に惨敗。そこでブリヂストンの開発陣は、それまでの常識を覆し、“アドヒジョン(粘着)”という新しい理論でタイヤを開発するのである。
例えるなら、消しゴムをやめて粘着テープでグリップ力を得るという発想である。
そのタイヤを開発したひとりが、マクラーレンの今井弘プリンシパルエンジニア(ビークルエンジニアリング部門)である。そして、そのタイヤの開発にゴーサインを出したのが、当時、今井の上司としてブリヂストンを支え、フェラーリに移籍した現在はビークル&タイヤインタラクション・デベロップメントとして活躍している浜島裕英だ。