野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
ベイスターズは変わったのか――。
涙にくれた2012年を総括する。
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村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byKyodo News
posted2012/10/23 10:31

10月8日の横浜スタジアム最終戦で大演説をするベイスターズの中畑監督。
少なくともファンには中畑監督の叫びは心に届いた。
いつしか中畑清は絶叫していた。マイクを手に持ち、広島側、横浜側のファンを向きながら、身振り手振りで熱っぽく言葉を吐き出す。スタンドから笑い声が漏れてもニコリともしない。最弱のチームの指揮官であることを受け止めたが故の飾らない総括とファンへの感謝。自らのクビを掛ける不退転の決意、不甲斐ない選手たちに対する檄、まさかのルイーズを獲ってくるフロントに対する要求、新沼(慎二)おつかれ、そんなものがすべて込められたような名演説。
最後の言葉を言い終えた後、銀色の紙テープが舞い、横浜側だけでなく広島側からも凄まじい歓声が湧いていた。周囲のファンは笑いながら涙を流す。球団の人も涙を貯めている。終始神妙な顔つきをしていた選手たちが「忘れることのできない心の傷」という言葉をどのように捉えたかは知る由もないが、その場にいた多くの人が中畑清の言葉に心を揺さぶられていた。来年もその先もずっと監督でいてほしいと願うほど、本当にこの人の本気の言葉は響く。なんで選挙落ちたんだろう。
引退する金本アニキに活を入れられた情けなさ……。
翌9日。甲子園球場でのvs.阪神戦。金本の引退試合となったベイスターズ最終戦は、2安打完封負けでサクサクと終え、今シーズンを終了する。驚いたのは試合後に行われた、金本の引退挨拶でのことだった。
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「DeNAベイスターズの皆さん。今年は中畑新監督を迎え、チームの雰囲気もガラッと変わり、常に注目されるチームになりました。しかし、一番目立っているのは監督でした。選手の皆さん、選手より監督が目立っているようでは駄目だと思います。監督より選手が目立つことを、中畑監督も望んでいることと思います。来年、ベイスターズが優勝争いをするようなことになると、一番日本で注目されるチームになると思います。日本球界のためにも、何とか来年意地を見せて、優勝争いを期待しています」
引退の挨拶で相手チームに発奮を促す言葉を掛けるなんて聞いたことがない。大選手の野球人生の際の際で苦言を呈されるなんて、一体どんだけ弱いんだ。どんだけ情けないんだろうか。そんな思いの一方で、5万観衆の前で晒し者にされるベイスターズの選手たちの「悔しい」という気持ちを喚起しようとしてくれた金本の気持ちが、涙が出るほどありがたかった。