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“新旧悪童コンビ”不在のアズーリ、
EURO準優勝国のプライドはどこへ?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/10/17 10:30
EURO2012準決勝ドイツ戦。カッサーノ(左)が巧みな反転からあげたクロスをバロテッリが頭で合わせて先制し、ドイツの気勢をそいだ。写真は2点目をあげたバロテッリを祝福するカッサーノ。2人のバッドボーイズの存在感はあまりにも大きかった。
「我々は勝ち続けるのみだ」と指揮官は批判の声を一蹴。
だが、同情すべき点はある。
6月のイタリア代表は、国際違法賭博疑惑や国内での震災という逆境と、低い下馬評をはねのけ、東欧の地で精魂尽くす戦いをした。カルチョ・スキャンダル発覚直後、カルチョの威信をかけて戦った2006年ドイツW杯を思い起こさせる気迫が今夏の代表にはあった。
メンタルとフィジカル双方に多大な消耗が残っても当然だ。長丁場の予選は本大会と同じテンションでは戦えない。
高地での難しいアウェーゲームを3対1で勝ち切った12日のアルメニア戦も、イタリアのメディアは「チームが間延びしている」と非難した。
ここに至って、いよいよプランデッリも反撃に転じ、「TVの前で見ているだけなら何とでも言える。これはW杯予選なのだ。批判されようとも勝ち続けるのみだ」と弁を奮った。
EUROでの汚名を返上すべく、選手たちの士気は高まる。
指揮官が強気に出られるのは、不調の一方で、新たな好材料もあるからだ。
アルゼンチンからの帰化FWオズバルドが3戦3発と気を吐いている。EURO出場は逃したが、相手DFを引きずるフィジカルと狡猾さに加えて、強者におもねることを良しとしない反骨心が武器だ。
EURO決勝での屈辱的敗戦を喫した選手たちも雪辱へ秘める士気は高い。
マルキージオやデロッシらは「イタリアの中盤への国際的評価は不当に低い」と、ブラジルでの名誉挽回の機会を狙っている。2年後に35歳になるピルロにはいよいよ代表引退の声が囁かれ始めたものの、最近になって指揮官と面談した天才司令塔は「必ずブラジルに行きます」とあらためて不退転の覚悟を示した。
さらに2年先を見越した世代交代も進む。
8月の親善試合イングランド戦では、招集された22人に'90年代生まれが6人もいたことに話題が集まった。