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“新旧悪童コンビ”不在のアズーリ、
EURO準優勝国のプライドはどこへ?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2012/10/17 10:30
EURO2012準決勝ドイツ戦。カッサーノ(左)が巧みな反転からあげたクロスをバロテッリが頭で合わせて先制し、ドイツの気勢をそいだ。写真は2点目をあげたバロテッリを祝福するカッサーノ。2人のバッドボーイズの存在感はあまりにも大きかった。
イタリア代表がリズムを見失っている。
9月から始まったブラジルW杯欧州予選のグループBで、首位(3節終了時点)につけてはいるが、試合内容はかなり乏しい。
「われわれがEURO準優勝国であることを思い出せ!」
アルメニアとデンマークとの10月の連戦を前に、プランデッリ代表監督が一喝したのも無理はない。
W杯予選の初戦ブルガリア戦では、自陣に引きこもり、ロングパスを多用する省エネぶりに、イタリア国民の多くが呆れ返った。ゴール量産が期待されたホームでのマルタ戦では、2点目を奪ったのが後半のロスタイムという有様で、現地メディアも「アズーリの音程は調子っ外れ」と手厳しい。
EUROで未完に終わった“新イタリア流”のスタイルを発展させるべき、との期待は今も大きい。ボールポゼッションと縦への速攻を協奏させる魅力的なサッカーを試みた大会の後だけに、ペースが上がらず肩透かしが続く現状には、厳しい批判が続いている。
“新旧悪童コンビ”と大黒柱の不調の影響が顕在化。
この背景には、“新旧悪童コンビ”の不在があった。
EURO準優勝の原動力となった2人のうち、代表へのモチベーションを失ったFWカッサーノについて、プランデッリ代表監督は、最早その役目を終えたと判断した。「(カッサーノと袂を分かって)別の道を行く」と言う指揮官と、それに同調する主将ブッフォンの冷淡な態度も、はみ出し屋の30歳という異分子をグループ内に留めておくことの難しさを示している。
一方の22歳のFWバロテッリは、数々のゴシップを提供した後、結膜炎やインフルエンザなど体調不良続きで、親善試合を含む8月以降の代表戦4試合で、活躍どころか1分間すらプレーしていなかった。
代役のいない大黒柱ピルロのプレーから“技のキレ”が失われているのも深刻な問題だ。昨季、ユベントスでほぼ無休のシーズンを送った後、EUROでもフル稼働した33歳のベテランには肉体疲労のツケがきている。司令塔のパフォーマンス低下によって、攻守の切り替えがままならず、現チームの攻撃はブツ切れで連続性がない。