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長友が人生初の退場で思い知った、
“ミラノ・ダービーの魔物”とは? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byMaurizio Borsari/AFLO

posted2012/10/14 08:01

長友が人生初の退場で思い知った、“ミラノ・ダービーの魔物”とは?<Number Web> photograph by Maurizio Borsari/AFLO

退場を告げられる長友。試合後、敵であるミランのDFダニエレ・ボネーラが「今日の審判は、長友の退場も含めて多くのミスを犯した」と語るほど、疑惑渦巻く試合となった。

 バレーリ主審から2枚目のイエローカードを出されると、長友佑都の眉毛はハの字になった。抗議を試みるが、動揺は隠せない。体中のエネルギーが一気に霧散してしまったような、頼りない表情。イタリア初どころか、試合後「たぶん人生で初めて」とふり返った。

 セリエA通算157回目のミラノ・ダービーは、長友のサッカー人生に苦い記憶として残るにちがいない。後半3分、憔悴した表情でピッチを後にした。

 ともにチャンピオンズリーグ(CL)優勝経験をもつクラブ同士のダービーマッチ(同都市のライバルによる試合)は、欧州広しといえどミラノ以外にない。今季の第7節に組まれたミラノ・ダービーは、欧州随一のプレステージ性をもつ舞台として、セリエA序盤戦のハイライトの一つだった。

 長友は、3日前の10月4日に、ヨーロッパリーグ(EL)の東欧遠征にも帯同していた。片道4000kmを越え、時差も3時間あるバクー(アゼルバイジャン)との往復は身体に応えたはずだが、快勝した試合では終始ベンチで温存された。開幕から続けていた試行錯誤の末、ようやく3バックにプレーバランスの最適解を見出したストラマッチョーニ監督にとって、左右のサイドハーフ両方のポジションをこなし、スピードとスタミナを高い次元で両立する長友は大一番でこそ重宝する。

今季のセリエA全試合で先発したのは、長友を含め3人。

 ターンオーバー要員に事欠かない大所帯のインテルにあって、今季開幕後のセリエA7試合すべてで先発したのは、エースFWミリートと守備陣を牽引するDFラノッキア、そして長友の3人しかいない。

 若き青年指揮官が、いかに長友を戦力として頼りにしているかは明白だ。ライバルとの重要な一戦にも、スタメンとして送り出されたのは当然だった。

 開始3分にサムエルの豪快なヘディングゴールで先制した前半、長友は今季ミランの新エースとして進境著しいFWエルシャーラウィへマークについた。左サイドの鋭いドリブル突破を武器にする19歳の新星を正面にすると、やや下がり目のポジションでシュートへの動きを未然に防ぐ。こぼれ球を取りにいった23分、DFジェペスへ正面からぶつかったファウルが悪質と判断され、1枚目の警告を受けた。

【次ページ】 インテルOBも「このハンドは擁護できない」と語る。

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