フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
視聴率低下著しい女子ゴルフツアー。
常連に割って入る新星はいつ現れる?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/08/04 08:01
沖縄県出身の比嘉真美子は、今年6月には日本女子アマチュアゴルフ選手権2連覇を果たした期待の18歳。シン・ジエ、佐伯三貴と国内トーナメントでトップ争いを繰り広げたほどの実力を持っているのだが……。
日本女子アマ優勝者でもプロでは即戦力になれない……。
アマ時代から注目されて、プロテストに受かってすぐシード権を獲得し、なおかつツアーでもすぐに勝つ。そんな横峯や諸見里のようにプロキャリアを華々しくスタートさせる選手は極めて稀になりつつある。誰もが数年間の適応期間を必要とするのは、ツアー全体が底上げされたことによる不可避の事態である。
その傾向は日本女子アマ優勝者のプロ戦歴を見ても分かるのだ。同大会は宮里藍が'03年、諸見里が'05年に優勝しているアマチュア最高峰のタイトルである。
女子アマ覇者といえば少し前ならプロでも優勝候補の即戦力と見られていたものだが、近年の優勝者を見てみるとそこまでとんとん拍子に出世している選手は見当たらない。
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彼女たちに話を聞くと、新人が向き合うプロの壁というものもなんとなく見えてくる。
「アマチュアの時から自分はプロだと思ってやっていたので、そんなにギャップは感じませんでした」
そう言うのは'09年大会覇者の藤本麻子。だがルーキーイヤーから期待値の高かった藤本がツアー初優勝をつかんだのもツアー2年目を迎えてからだった。手首痛などで苦しんだ時期もあっただけに、会見では「アマでは出場する大会に合わせてピークを持っていけたけど、プロのハードな日程、移動などに苦しんだ」と語っていた。特に女子は毎週隙間なく試合があるだけに、その過酷さは想像以上だろう。
アマ時代には無縁だった様々なしがらみものしかかる。
藤本の翌年に女子アマを制した酒井美紀は、もっとストレートにプロとアマの違いを語る。
「プロはゴルフが仕事。プロになって一番変わったのは、自分のプレーにお金が懸かっていることですね。それによってパターとかもアマチュアの時ほどガツガツは打てなくなる。アマチュアならガツガツやって良いスコア、悪いスコアのムラが出たとしても、いい時がよければそれで構わない。でも、プロになると一打一打慎重に丁寧にゴルフをやろうと考えるようになりました」
宮里や横峯の活躍で女子ツアーの注目度が高まったがゆえに一時は有力新人が青田買いされるような時期もあった。まだプロとしての実績がまるでなくとも、当たり前のように舞い込んでくるスポンサー契約。ただし、期待という重荷を背負いきれずに苦しむ選手たちも多かった。アマチュア時代に推薦を受けて出場していた頃よりもプロで成績が落ち込む選手もたくさんいるのである。
一打に賞金がかかり、賞金は試合の出場権に直結する。自らのゴルフにより多くの人が関わるようにもなる。プロとアマは選手としての肩書きのみならず、ゴルフそのものにまで影響を与えるのだ。有形無形のプレッシャーはアマ時代にはなかったものとして、20歳前後の女子選手たちには重くのしかかるのだろう。