ロンドン五輪EXPRESSBACK NUMBER
テロ、エコ、ニートのロンドン五輪。
開幕後に、街の雰囲気はどう変わる?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakaomi Matsubara
posted2012/07/26 16:30
ロンドンの繁華街であるピカデリー・サーカス付近。五輪の装飾も見られるが、いつもと変わらぬ観光地としての賑わい……という雰囲気である。
ロンドン五輪の取材のために当地に来ている。
ロンドンに来るのは、約10年ぶりになる。なのに、かつて訪ねたときと変わらぬ光景がある。
当時はなかった高層ビルも建っている。明らかに新しい建物は増えた。だから、正確に言えば、光景が変わらないのではない。おそらく、雰囲気、空気に変わりがないのだろう。それは、オリンピック開幕直前であっても、まだオリンピックのムードに包まれていないことをも意味する。
4年前の北京、あるいは2年前、冬季五輪の開催地だったバンクーバーとは対照的だ。
北京は開催においていくつかの問題を抱えていても、いや、抱えていたからこそ国家の威信をかけ、スタッフも含めて格別の気合いをこめて大会に臨んでいた。良かれ悪しかれ、それはオリンピックがただの国際大会ではないという空気を生み出すことにもつながっていた。
カナダはウインタースポーツを愛する人の多い国だ。かの地バンクーバーも当然お祭り騒ぎと化していた。だから街では、オリンピックを前にする多くの人々の高揚がずいぶん感じられた。数少ないチケットの販売をめぐって争奪戦が起こるなど、大会を楽しみにする空気に街全体が包まれていたのだ。
それらとは対照的なほど、ロンドンは、地元の人々は落ち着いているように感じられる。
ロンドンの街にオリンピック前夜の高揚が無いのはナゼ?
ピカデリー付近などには各国の国旗がつるされ、「London 2012」という文字の入った旗も目にする。
開幕に間に合わせようと町中のインフラや飾り付けなども、まだ準備が進められている。主要道路の車道の一つは、オリンピック専用のレーンであることを示すマークが記され、運用が始まった。市内に聖火リレーが到着した時などは、ランナーの進む道沿いに人々が詰めかけた。
ただ、街として捉えるなら……妙に落ち着いているのだ。
オリンピックの開催が唯一、3回目となる都市ならではの成熟なのか。
開幕すれば、空気は変わるのか。
少なくとも現時点では、オリンピック前という空気はない。テロへの懸念も消えていない。