フットボール“新語録”BACK NUMBER
豪州代表・アレックスの目に映った、
ザックジャパンが強い本当の理由。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2012/07/03 10:31
今野泰幸と競り合うオーストラリア代表のアレックス。2011年から所属する清水エスパルスでは、中盤のインサイドのポジションで活躍。高原直泰に代わってFWで起用されることもある。
「組織化されたプレーは、なかなか代表では見られない」
ブリスベンでの試合では、両チームに退場者が出て、1対1の引き分けに終わった。アレックスは「互いにファイトして、フェアな結果だったと思う」と振り返る。
では、試合中、日本についてどう感じていたのか?
アレックスは言った。
「日本はとてもテクニックがあって、チームとしてもまとまりがあり、優れたパスをつないでいた。まるでクラブチームのように、互いを理解してプレーしていた。ああいうオーガナイズされたプレーは、なかなか代表では見られないと思う」
日本代表について、組織的だという評価は、日本のサッカーファンからしたら聞き慣れたものだろう。ただし、「まるでクラブチームのようだった」という言い回しは、これまであまり耳にしなかった褒め言葉ではないだろうか。
スペインにおけるバルサ、ドイツにおけるバイエルンのように……。
最近、代表チームの世界では、同一クラブの選手たちをそろえて、より完成度の高い連動性を生み出そうとする傾向が見られる。バルセロナの選手を中心にしたスペインや、バイエルンの選手を守備にそろえたドイツのように。
一方、日本は同じクラブでプレーしている選手は、ガンバ大阪の遠藤保仁と今野泰幸くらいで、オーストラリア戦で先発した他の9人は全員異なるクラブの所属だった。だから個人的には、日本代表をクラブチームというふうに見る発想は思いつきもしなかったのだが、アレックスが言うように、それを長所としてもっと意識してもいいのかもしれない。
だが、裏を返せば、「クラブチーム的」だからこその課題もある。
当たり前だが、日本代表の選手たちはいくらクラブチーム的と言っても、普段からいっしょにプレーしているわけではない。今回のW杯最終予選の3試合で日本が素晴らしい連係を見せられたのは、アゼルバイジャン戦を含めて約2週間の準備期間があったことも大きかった。