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フランスをバラバラに切り裂いた、
“バルサ”として完成間近のスペイン。 

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/06/24 12:05

フランスをバラバラに切り裂いた、“バルサ”として完成間近のスペイン。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

この試合で代表100試合目となるシャビ・アロンソは、2得点してマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれている。次戦は、C・ロナウド率いるポルトガルとの対戦になる。

後半盛り返したフランスが、押し切れなかった理由。

 それでも後半、フランスはやや盛り返している。

 これはドビュッシーに替えて攻撃的MFのメネズを投入するなど、ブランがメンバー構成を正常に戻したのが大きい。左サイドで孤立していたリベリーが、中盤のサポートに回るようになったことも影響しているだろう。

 とはいえ試合の流れを引き戻すには至らなかった。選手同士の動きがこなれていないからである。

 フランスのカウンターは、ベンゼマとリベリーがポストで一旦受け、そこから他の選手が絡んでいく形になっていたが、パスのコースやタイミングがどうしても合わないために、決定的なチャンスを作れなかった。

 逆にいえば、スペインの凄みはまさにここにあるともいえる。

スペインとフランスには、チームの連動性に圧倒的な差があった。

 もともと代表チームの場合、連動性を煮詰める時間などないに等しい。事実、イタリア戦におけるスペインは、バルサのゼロトップを「模倣」しているだけだった。CFの位置にはセスクがつき、右SBのアルベロアはアウベス並に高い位置に張っていたが、かろうじて個の能力の高さでポゼッションを高めていたにすぎない。

 しかしフランス戦のスペインは別物だった。

 チーム全体としての動きの滑らかさと効率性、戦術の理解度やリズムの緩急の付け方は明らかに一段階スケールアップした。おまけにトーレスを使ったワントップにもさらに磨きをかけている。トーレスは常にDFの裏をとろうとしているため、彼がピッチにいるときには中盤の構成力はやや弱くなる。トーレスが出場している状態でも中盤を支配できるようにするのが、スペインの次の目標になっていくはずだ。

 試合後、ピッチ上ではナスリとシルバがユニフォームを交換する場面が見られた。2人は共にマンCでプレーするチームメイトである。

 だがそれぞれが所属する代表の明暗は大きく分かれた。

 ナスリのフランス代表は、各選手が常日頃は異なるクラブチームでプレーしているという現実を超えられなかった。シルバが名を連ねるスペイン代表は、へたなクラブチーム顔負けのコンビネーションを身につけつつある。シルバがバルサの一員だと言ったとしても、誰も疑問は抱かないだろう。ナスリは複雑な心境だったのではないか。

  フランスを下したスペインが、次戦の準決勝で当たるのはクリスティアーノ・ロナウド擁するポルトガル。単純にレアルvs.バルサの構図にはならないにしても、その因縁めいた戦いを楽しんでみたい。

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