欧州CL通信BACK NUMBER
バイエルンがリヨンに余裕の大勝。
ファンハールは欧州一傲慢な監督?
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byBongarts/Getty Images
posted2010/04/28 11:35
立ち上がりの15分間は、両チームのゲームプランが衝突する時間帯である。
準備してきたプランが見事に的中することもあれば、逆に相手が思い通りに動かず、プランが狂ってしまうこともある。
CL準決勝の第2レグ、リヨン対バイエルン――。
プランが狂ったのは、前者だった。
この日のリヨンのコンセプトは、実に明快だった。
キックオフと同時に、リヨンの選手はとにかくロングボールを蹴り続けた。10年前のイングランド人? と突っ込みたくなるくらいに、一か八かのロングボールを前線に送り込んだ。
とはいえ、古典的なイングランドスタイルと全く同じわけではない。ロングボールを蹴った瞬間、ほとんどの選手が相手陣地に雪崩れ込む。もし、バイエルンの選手がボールを拾っても、猛烈なプレスをかけて、ボールを奪ってしまおうという作戦だ。もしうまくいけば、相手ゴールから近い位置でカウンターを仕掛けられ、ビッグチャンスが生まれる。<ロングボール>+<前線からのプレス>という、“古くて新しい”戦術だ。
しかし、そのゲームプランは、バイエルンによっていとも簡単に覆されてしまう。
なぜか?
プレスをかけられても平然とパスを回したバイエルンDF陣。
その理由、バイエルンの選手たちの“傲慢”さにある。
普通のチームなら、自陣でボールを拾った瞬間にプレスをかけられたら、リスクを避けて遠くにクリアしようとするだろう。たった1度のミスが失点につながる。無意味な冒険はすべきではない。
だが、立ち上がりの15分間、バイエルンの選手たちは、とことんボールをつなぐことにこだわった。
相手がプレスに来る。味方の近くにも敵が来ている。にもかかわらず、DFラインの全員(ファンブイテン、バッドスチューベル、ラーム、コンテント)が、何の恐れも見せずに、近くの味方にパスを出していたのだ。
おそらくリヨンのピュエル監督は、プレスをかければ相手はクリアに逃げ、それを拾って波状攻撃を仕掛けられると考えていたのではないだろうか。蟻地獄に落とすかのように、息の根を止めようと思ったはずだ。ところがバイエルンの選手たちは、蟻地獄に落ちても全く動揺せず、平然とプレーするではないか。
オリッチの先制点で試合の帰趨はほぼ決まった……。
立ち上がりの15分間で、ほぼこの日の試合は決着がついた。
ハイプレスの連続により、リヨンに一時的な疲労が溜まった隙を、バイエルンは見逃さなかった。27分、アルティントップのスローインからミュラーがロッベンとのワンツーでペナルティエリアに侵入し、中央へグラウンダーのパス。オリッチが体を回転させながらボールをトラップし、先制点をネットに突き刺した。
バイエルンは第1レグを1対0で勝利しており、このアウェーゴールによって、リヨンが勝つには3点が必要になってしまった。リヨンの気持ちが切れてしまっても、責めることはできない。59分にDFクリスが退場し、67分、78分に再びオリッチがゴールを決めた。0-3という大差でリヨンは敗れた。