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NBAで巻き起こった「リンの熱狂」。
SNS時代のスター物語とその顛末。
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph bySports Illustrated/Getty Images
posted2012/04/02 10:30

2月下旬、世界最大の部数を誇るスポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』の表紙を飾ったジェレミー・リン。彗星のごとく出現したスターに、全米が熱狂していた。
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アジア系のリンだから成し得たサクセス・ストーリー。
アメリカのスポーツ界では高校の段階からスカウティング網が発達し、才能を見逃すことはほとんどないはずなのだが、リンの場合、アジア系という盲点があった。アメリカには「アジア人はスポーツが苦手」という先入観があるから、それがスカウト、コーチの目を曇らせてしまったのだろう。
だからこそ、アジア系の人間にとって、リンのサクセス・ストーリーは新たな可能性を拓くものだった。
しかし、世論はかつてないほど飽きっぽくなってしまった。ソーシャル・ネットワーキングは常に話題を求めるから、他に面白そうなことがあれば、すぐに注目は別のトピックに移ってしまう。
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図らずも、“Linsanity”は時代を映す鏡となってしまった。
しかし、ジェレミー・リンの将来は明るいと思う。ヘッドコーチとの相性次第ではチームの中心選手になれるだろう。まだまだ可能性を秘めているのだ。
それに2月の熱狂の記憶は世界中に残るから、将来は食べるに困らないだろうと思う。ハーバード大学卒業という「ブランド」も、ものすごくプラスになるだろうし。
