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NBAで巻き起こった「リンの熱狂」。
SNS時代のスター物語とその顛末。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph bySports Illustrated/Getty Images

posted2012/04/02 10:30

NBAで巻き起こった「リンの熱狂」。SNS時代のスター物語とその顛末。<Number Web> photograph by Sports Illustrated/Getty Images

2月下旬、世界最大の部数を誇るスポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』の表紙を飾ったジェレミー・リン。彗星のごとく出現したスターに、全米が熱狂していた。

わずか1カ月後、ふたたびアメリカを訪れてみると……。

 それからわずか1カ月。

 3月下旬、ふたたびアリゾナを訪れ、同じ店をのぞいてみた。やはりリンのユニフォームはない。しかし、今回は理由が違った。

「もう、“Linsanity”は終わった。もう、ジェレミー・リンのユニフォームを欲しがる人はほとんどいなくなってしまった」

 えっ? 

 まだブームが始まってから2カ月も経っていないじゃないか。

 ジェレミー・リンは、もう“消費”され尽くしたのだろうか?

SNS時代における熱狂の拡散と賞味期限切れの速さ。

 TwitterにFacebook。ジェレミー・リンの人気がアッという間に世界中に広がったのは、新しいソーシャル・ネットワーキングの形が成立していたからだ。

 しかし、その熱狂は一時的なもので、アッという間に冷めていく。

 違和感を覚えるのは、ジェレミー・リンは今もそれなりに活躍を見せているのに、熱狂が冷めるスピードが速すぎることだ。

 たしかにコービー相手に38点を取った時のような華々しい活躍はない(これはヘッドコーチが交代し、オフェンスの中心が他の選手に移ってしまったからである)。それでも3月は平均得点14.6、平均アシストは6.2とまずまずの成績を残している。リンは今シーズン終了後にニックスとの契約は切れるが、この成績ならばどこかのチームは必ず食指を動かす数字だ。

 おそろしいことだが、「新星」としてのジェレミー・リンは、もはや賞味期限切れなのだ。数年前だったら、考えられないほどの速さで話題がしぼんでいった。

 だがジェレミー・リンの登場は、いまだにアメリカ、特にニューヨークでは一週間にして無名の人間が、世界的な名声を獲得することができるという「夢」を見せてくれた。

【次ページ】 アジア系のリンだから成し得たサクセス・ストーリー。

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ジェレミー・リン
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