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NBAで巻き起こった「リンの熱狂」。
SNS時代のスター物語とその顛末。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySports Illustrated/Getty Images
posted2012/04/02 10:30
2月下旬、世界最大の部数を誇るスポーツ専門誌『スポーツ・イラストレイテッド』の表紙を飾ったジェレミー・リン。彗星のごとく出現したスターに、全米が熱狂していた。
2010年、ハーバード大学で経済学を修めたもののウォール街には進まず、NBAという海千山千の世界に飛び込んだ選手がいた。
ジェレミー・リン。
台湾系のアメリカ人。
ゴールデンステート・ウォリアーズでプレーした1年目、出場試合はわずか29試合にとどまった。そして2年目の今季、キャンプの段階から2チームからクビを言い渡されたものの、拾う神がいた。ニューヨーク・ニックスである。
1月まではほとんど出番はなし。ところが先発選手が故障して、お鉢が回ってきた。そこから奇跡が起きる。2月4日のネッツ戦、いきなり25点をマークする。その後の2試合も28、23。この3試合でニューヨークだけでなく、アメリカ、世界が彼の名前を知るようになった。
そして2月10日、ロサンゼルス・レイカーズ戦で38点をあげ、かのコービー・ブライアントを上回った。
“Linsanity”という単語は、全米のメディアを席巻した。「リンの熱狂」。わずか一週間でひとりの人間の運命が変わった。
NY以外、アメリカ中で売り切れが続出したリンのユニフォーム。
2月下旬、メジャーリーグのスプリング・トレーニングの取材でフロリダ、アリゾナを回ったとき、どこもかしこもジェレミー・リンの話題で持ち切りだった。
リンの背番号「17」が入ったユニフォームをふたつの州で探したのだが、見つからなかった。アリゾナのモールにある店主がいった。
「いま、話題でウチの店も欲しいんだけど、品薄で入ってこない。ニューヨークに行かない限り、今は手に入らないんじゃないかな」