リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
カップ戦で大躍進、リーグで絶不調。
A・マドリーの“摩訶不思議”。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/04/23 10:30
欧州屈指の2トップ、フォルランとアグエロを擁していながら、リーガでは10位と低迷する
“4本の矢”以外にもあるアトレティコの強さの秘密。
一方、ガラタサライ(トルコ)、スポルティング・リスボン(ポルトガル)、バレンシアといった欧州の強豪を退けて勝ち上がってきたEL、決勝まで上り詰めた国王杯では、リーガとは違った傾向がうかがえる。
それは、アトレティコのアウェーでの強さだ。
アウェーゴールの“うまみ”を最大限に利用しているとも言える。それがより顕著なのは、EL決勝トーナメントの戦績だ。
【アトレティコの決勝トーナメント戦績】 (※左側がホーム)
●ベスト32 第1戦(2/18) アトレティコ 1-1 ガラタサライ
第2戦(2/25) ガラタサライ 1-2 アトレティコ
●ベスト16 第1戦(3/11) アトレティコ 0-0 スポルティング
第2戦(3/18) スポルティング 2-2 アトレティコ
●ベスト8 第1戦(4/1) バレンシア 2-2 アトレティコ
第2戦(4/8) アトレティコ 0-0 バレンシア
この結果から見えるのは、ホームでのロースコアと、アウェーでのゴールの奪い合いだ。敵が攻勢に出てくるアウェーでは、アトレティコの攻撃力が最大限に引き出されている。
欧州の強豪国が軒並みホームで苦戦し敗北する。
ベスト32のガラタサライ戦とベスト16のスポルティング戦は、共に第1戦がホームだった。ここで敵は守備を固め、彼らのホーム(すなわちアトレティコのアウェー)での第2戦で決着をつける目算で試合に臨んでいた。そのため、第1戦は手堅い展開となり、第2戦は“撃ち合い”となった。そうなれば、アトレティコは前述の4本の矢を駆使して、かなりの高確率でゴールを生み出すことができる。同様に失点も増えるが、アウェーゴールというルールがアトレティコに味方した。
ベスト8では、バレンシアがホームでの第1戦で勝負を決めようと、積極的に攻撃を仕掛けたことで、アトレティコのカウンターが牙を剥いた。バレンシアのホームスタジアムであるメスタージャで2ゴールを奪い、1週間後の第2戦ではスコアレスドローで逃げ切りに成功したのだった。