リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
カップ戦で大躍進、リーグで絶不調。
A・マドリーの“摩訶不思議”。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/04/23 10:30
欧州屈指の2トップ、フォルランとアグエロを擁していながら、リーガでは10位と低迷する
今季のアトレティコ・マドリーの戦いぶりは、まさに“摩訶不思議”だ。
国王杯では決勝進出、ヨーロッパリーグ(EL)でもベスト4入りを果たした。国内と欧州で2冠の可能性を残している“カップ戦線”では大成功とも言えるシーズンを過ごしている。
しかし、リーガではさっぱり振るわない。
スペイン対決となったEL準々決勝でバレンシアとの激闘を制した後、キケ・フローレス監督は「これでチームは長い間かかっていた病気から回復した」と語ったものの、その直後、最下位のヘレスにホームで1-2と敗北。さらに翌節、ビジャレアルにも競り負けて、ヘレス戦前のエスパニョール戦も含めてリーガ3連敗で10位と、泥沼に足を踏み込んでいる。
カップ戦もリーグ戦も同じメンバーなのに勝率が違う理由。
監督のキケはこれまで、カップ戦もリーガもほぼ同じメンバーで臨んでおり、どちらかを優先するということはしなかった。カップ戦、リーガ共に、アグエロ、フォルラン、シモン、レジェスによる電光石火のカウンターが彼らの生命線となっている。バルセロナをも撃破した欧州屈指の“4本の矢”が猛威を振るい、決定的なチャンスを生み出してきた。
一方の守備陣は、中盤を省略した攻撃を仕掛けることで生じる弊害に悩まされている。最終ライン、中盤、前線が連動してボールを運ぶことが少ないので、チーム全体が間延びする。シュートで攻撃を終えた場合はさほど問題は生じないが、前掛かりになった状態でボールを奪われたとき、カウンターを受けて自陣深くまで攻め込まれてしまう。ウイファルシ、ペレア、アントニオ・ロペスなど各国代表クラスのDFを擁していながら、33節を終えた時点で無失点試合はわずか6。組織的なディフェンスは全くと言っていいほど機能していない。
この点から、長丁場のリーガでアトレティコが苦しんでいる理由が浮かび上がってくる。目の覚めるようなファインゴールを決めても、あまりに守備が脆いため勝ちきれない。当然勝ち点は伸びず、上位進出は難しくなっている。