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<Number800号特別企画・地域に生きる> オービックシーガルズ 「未来をつくるホームタウン活動」
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byKunihiko Katsumata
posted2012/03/22 00:00
被災したチームとして地域のために何ができるのか。
力強い後ろ盾を得て、シーガルズは息を吹き返す。探し続けていた専用グラウンドが見つかり、習志野をホームタウンとしたのも同じ'03年のことだ。大橋が振り返る。
「もう存続は難しい。チームのみながそう感じていた時にスポンサーも練習拠点も同時に見つかった。ツキのあるチームだと思います。おかげで、これまでやりたくてもできなかった地域活動に着手することができた。勝つためのチーム作りに、“仲間”を増やすことは不可欠ですから」
たんに入場料収入が増えるだけではない。ファンが増えれば、それが選手たちの勝ちたい意欲につながる。直に声援を受ければ、それが相手を倒す力にもなるだろう。選手が小学校を訪問してフラッグフットボールを教えたり、ジェフユナイテッド千葉と合同で体験教室を開いたり、アメフト界の革命児と呼ばれるように、先駆的な活動を次々に率先してきた。
「昨年はあの不幸な震災で習志野も被害を受けました。Xリーグで唯一の被災チームであるわれわれに何ができるのか。勝利で還元するのはもちろん、ボランティアや駅前での募金活動もそうです。市民の方と直に触れ合い、『頑張って!』と応援されれば選手は励みになる。地域のために活動することは、強くなるための練習と同じことなんです」
5月にはXリーグ所属のチームとして初のドイツ遠征を企画。
伝統の変革する力に地道な地域活動が実を結び、オービックシーガルズはいま、第2の黄金期を迎えている。
チームがさらに強くなるために、秘策はあるのか。
「アメフトは毎年戦術が進化していくので、立ち止まっているとすぐに研究されてしまいます。過去の成功体験にとらわれず、いかに自分たちが変化できるか。直後に3連覇と言ったのは、志の持続につながると考えたからです」
前人未到の社会人チーム3連覇という快挙が、新たなモチベーションとなり、選手を突き動かすのだろう。
この5月にはXリーグ所属のチームとして初のドイツ遠征を企画。現地で単独クラブチーム同士の真剣勝負を目論む。「いつか世界有数の強いクラブチームになりたい」とその目は遥か先の未来を見すえていた。(敬称略)