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テリー主将降格&カペッロ監督辞任。
災い転じて新生イングランドが誕生!?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2012/02/17 10:30
次期主将候補は、ジェラードかパーカーが有力。しかしカペッロが信頼を寄せていたように、テリーのキャプテンシーは絶大。後任は求心力を発揮することができるのか
新旧エースのルーニー、リネカーもレドナップを後押し。
無論、トッテナムが易々と指揮官を手放すはずはないが、レドナップは、元々、EURO2012後の新監督として有力視されていた。役員が「本人の気持ちしだいだ」とBBCにコメントを出し、ダニエル・レビー会長が、ジョゼ・モウリーニョ(現レアル・マドリー)への接触を試みていると噂されるなど、クラブ側が離任を覚悟している節はある。賠償金付きの引き抜きは十分に現実的だ。
レドナップ自身が、以前から代表監督就任を夢見ていることは周知の事実。カペッロ辞任翌朝の取材攻勢には、「トッテナムのことしか頭にない」と語っているが、協会から正式な就任要請を受けるまでは、他にコメントのしようがないだろう。
協会は、9日に行われたカペッロ辞任の説明会見の場で、外国人監督も後任候補に含めるとしているが、同時に、デイビッド・バーンスタイン会長自ら、新監督は「英国人が望ましい」とも認めている。
カペッロ就任時に、英国人の有力候補と目されたマーティン・オニールは、昨年12月にサンダーランドの監督に就任したばかり。
「ハリー・レドナップがいい」というウェイン・ルーニーと、「本人が望めば監督の座は彼のもの」というガリー・リネカーによる、新旧代表エースのツイッターでの発言を含め、国内の意見はほぼ一様にレドナップを後押ししている。
今季中は、2月末のオランダ戦(親善試合)で暫定指揮を執るスチュワート・ピアース助監督の協力を仰ぎ、今季終了後からレドナップが専任として代表を率いるという線が濃厚だ。
会見で、カペッロ辞任を「残念だ」と語ったバーンスタイン会長の表情は、その発言とは裏腹に明るかった。
監督交代で次期キャプテン指名問題にも明るい兆しが。
監督交代は、困難が予想された次期キャプテン指名においても好材料だ。
キャプテン降格後も、代表の自主引退を否定しているテリーは、CBとしてメンバー入りする公算が大きい。新キャプテンは、テリーと非白人系の代表選手との間にあるとされる溝を埋めながら、チームを1つにまとめなければならない。しかも、カペッロ体制のままであれば、監督の希望は自分ではなくテリーだと知りながら、キャプテンを務めなければならないはずだった。
リオ・ファーディナンドなどは、テリーの人種差別発言の対象とされているのが実弟であり、かつ、テリーのキャプテン復帰で降格した屈辱があることから、早々に後任辞退を表明したほどだ。その点、新監督の人選であれば、新キャプテンは、少なくとも指名を意気に感じて責任を負うことができる。
もはや国民に望まれてはいなかった指揮官の下、国民が問題視するキャプテンの人種差別容疑が暗い影を落としていたイングランドは、カペッロの辞任により、士気を高めて大会に臨む転機を得た。
栄光への道が険しい現実は変わらないが、国際大会に威勢良く乗り込む、イングランドらしい姿に戻ることはできそうだ。国内が、「ニュー・マネージャー、ニュー・キャプテン」の報に沸くまで、さほど時間は掛からないだろう。